- 「適応障害ってどんな病気なの?」
- 「適応障害とうつ病ってなにが違うの?」
- 「最近ストレスが溜まりがちで、なんらかの病気に発展してしまいそうで不安…」
このような疑問やお悩みをお持ちの方のために、今回は適応障害について解説します。
適応障害は誰もが発症する可能性がある身近な病です。本記事を参考に、ぜひ自身のセルフケアにお役立てください。
目次
適応障害とは
適応障害とは、強いストレスが原因で心身の不調が現れる心の病気のことです。ストレスの原因が明確にわかっており、ストレス元から離れると症状が軽減されるという特徴があります。
たとえば仕事でミスをしたときや満員電車に乗ったとき、友人と喧嘩をしたときなど、わたしたちはさまざまな場面でストレス感じます。その際気分が落ち込んだりイライラしたりするのは、誰にでも起こるごく自然な反応です。
一方適応障害の場合、日常生活に支障をきたすほどの強いストレス反応が起きるという特徴があります。
また、うつ病など適応障害と類似する病気も多くあることから、なんらかの症状がある場合は自己判断せず早急に受診することが重要です。
診断について
以下の基準を満たすと適応障害と診断される可能性が高いとされています。
- ストレスの原因が明確であり、ストレスが発生してから3か月以内に症状が出現している。
- ストレスによって通常では考えられないような著しい苦痛を受けている。
- ほかの精神疾患の基準を満たしておらず、また既存の精神疾患が悪化したものでもない。
- 死別反応(※)によるものではない。
- ストレスの原因がなくなると、6か月以内に症状が治まる。
※大切な人を失った際に感じる悲壮感のこと
症状
適応障害では以下のようなさまざまな症状が現れます。
<情緒面>
不安、抑うつ、気分の落ち込み、集中力の低下、焦燥感、緊張、悲壮感など
<身体面>
倦怠感、食欲不振、頭痛、めまい、動悸、腹痛、腰痛、肩こり、過呼吸など
<行動面>
無断欠席、遅刻、暴飲暴食、ひきこもり、不登校、過剰な飲酒、物を壊すなど
なお、適応障害はストレスの原因がはっきりしており、原因から離れると症状が和らぎやすいです。
たとえば職場での人間関係が原因である場合、出勤日は気分の落ち込みや不安にかられるといった症状が現れますが、休日はストレスが軽減され趣味や好きなことに没頭できます。
このように、適応障害によって現れる症状やタイミングはさまざまです。
「この症状が出ているから適応障害だ」と考えるのではなく、なにがストレスの原因になっているのかを知ることが重要なのです。
適応障害の原因は強いストレス
適応障害の原因となるストレスはさまざまです。
- 学校や職場、家庭内での人間関係
- 仕事内容や残業時間などの就労環境
- 就職や転職、引っ越しなど環境の変化
- 結婚や昇進など一般的には好機とされているできごと
- 出産や育児、介護など
なおストレスの原因を考えるうえでは、ストレスの感じ方は人それぞれであるという点を考慮しなければなりません。
周囲からは「些細なことだ」と捉えられるできごとでも、本人にとっては大きなストレスとなっている可能性があります。安易に本人の弱さや甘えを指摘してはなりません。
ストレスが発生するメカニズム
そもそも私たちが普段感じているストレスは、「ストレッサー」と「ストレス反応」の2つが対になって発生しています。
ストレッサーとはストレスの原因となるストレス環境のことで、ストレス反応とはストレッサーに対する心と体の反応のことです。
たとえば「工事現場の騒音がうるさくてイライラした」というストレスの場合、「工事現場の騒音」がストレッサーで「イライラした」がストレス反応に該当します。
ストレッサーをストレスと認知するまでには、まず「自分にとって有害であるか無関係であるか」を判断します。その後、「対処方法を知っているか」、「対処方法は実現可能か」の2点を検討し、どちらかが不可能と判断されるとストレスが急激に高まるのです。
人によってストレスの感じ方はさまざまであり、「このストレスにはこう対処するべきだ」という答えはありません。
類似する精神疾患との違い
うつ病
うつ病は気分障害のひとつで、憂うつ感や不安感を覚えたり身体症状が現れたりします。
発症の原因ははっきりと判明していませんが、脳の働きに不調が生じエネルギーが欠乏して発生するものだと考えられています。
うつ病は「約16人に1人は一生のうちに一度はかかる」と言われており、けっしてまれな病気ではありません。適切な治療を受けない場合、自殺にまで追いつめられてしまうこともあり、恐ろしい病です。
適応障害とうつ病は症状が似ていることから混合されやすいですが、「原因となるストレスが明確であるかどうか・ストレスから離れると改善するかどうか」の点で違いがあります。
たとえば仕事がストレスの原因である場合、それぞれ以下のような違いがあります。
<適応障害>
出勤前から頭痛や腹痛を発症、憂うつな気分になる。休日は趣味や好きなことに没頭でき外出もできている。
<うつ病>
なぜだかわからないが一日中気分が落ち込み、何をしていても楽しくない。休日も同じ状態が続き外出もままならない。
なお、適応障害を発症後にうつ病へ移行してしまうケースや、経過観察をするうちにうつ病と再診断されるというケースもあります。なんらかの症状がある場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
※参照:1 うつ病とは(厚生労働省)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSDとは、生死にかかわるような強い体験をしたあとに生じる精神疾患のことです。
自分の意思とは無関係につらい体験を思い出したり、幸福感や優しさなどの感情が持てなくなったりするなどの症状が現れます。
適応障害の場合も、ストレスの原因がトラウマとなり極度の不安や苦痛を抱き、症状が現れることがあります。この症状はPTSDと似ているため注意が必要です。
「原因となるできごとが軽度のものか」、「生死にかかわる強い体験なのか」の2点に着目し、どちらに該当するか慎重に判断しなければなりません。
適応障害を発症し休職する場合の注意点
仕事上のストレスが原因で適応障害を発症した場合、無理に出勤せず場合によっては休職することも大切です。
ただし、復職のタイミングには気を付けなければなりません。
前述した通り、適応障害ではストレスの原因がはっきりしており、原因から離れると症状が和らぐという特徴があります。
そのため、休職期間中は仕事から離れることで比較的早期に症状が改善しますが、これは病気が完治したわけではありません。体調が良くなったからと再び職場に復帰すると症状が再発したり、悪化してしまったりする可能性があるのです。
復職のタイミングについては、主治医や会社と十分に相談した上で慎重に決めるよう注意しましょう。
また、企業は従業員が休職する際の対応や復職支援について、事前に準備しておく必要があります。
企業内での取り組みについては下記ページに詳しく載っているため、こちらもご覧ください。
事例紹介
海外赴任を契機に従業員と配偶者の両者にメンタルヘルス不調をもたらした事例
<概要>
年齢:37歳
性別:男性
職業:家電メーカーの海外駐在員・中間管理職
<経緯>
Kは春の異動でイギリスに出向となった。妻は仕事や家庭の事情を理由に同行を渋り、Kは仕方なく単身赴任した。現地で多忙な日々を送りながら不自由な生活に直面したKは、妻を説得し妻子を渡英させた。しかし、妻は慣れない環境でうつ状態になり帰国。妻子が日本に戻ると妻は回復し仕事にも復帰したが、Kは精神的に不調となり欠勤が増えた。トラブルが重なり、クリスマス休暇で帰国し診察を受けた結果「生活環境の変化による適応障害」と診断され海外勤務を中止。現在は元の職場に復帰し勤務している。
家族の支援を得て円滑な職場復帰につながった事例
<概要>
年齢:41歳
性別:男性
職業:電気機械器具製造業、研究開発職
<経緯>
同業他社からキャリア採用されたAは、前職とのマネジメントの違いや上司からのプレッシャー、長時間労働などを理由にメンタル不調となり、産業医から休業が必要だと診断された。Aは給与削減を心配していたものの、産業医と人事が妻に給与保障などを説明し、できるだけ仕事のことは考えず安心して休養を取るよう促した。休職中は定期的な連絡を取り、3か月後には復職可の診断が下りた。復職前にはストレス源であった上司を変更し、妻や産業医などと話し合いを行ったうえで復帰。現在は通院治療を継続しながら勤務している。
年齢:41歳
性別:男性
職業:電気機械器具製造業、研究開発職
<経緯>
同業他社からキャリア採用されたAは、前職とのマネジメントの違いや上司からのプレッシャー、長時間労働などを理由にメンタル不調となり、産業医から休業が必要だと診断された。Aは給与削減を心配していたものの、産業医と人事が妻に給与保障などを説明し、できるだけ仕事のことは考えず安心して休養を取るよう促した。休職中は定期的な連絡を取り、3か月後には復職可の診断が下りた。復職前にはストレス源であった上司を変更し、妻や産業医などと話し合いを行ったうえで復帰。現在は通院治療を継続しながら勤務している。
セルフケアの紹介
セルフケアとは、ストレスに対して自己管理や自己治療などをおこない、自分自身をケアすることです。
セルフケアを身につけると自分のストレスやメンタルヘルスの不調にいち早く気づき、自身で対処できます。心身の健康を保つために、手軽に取り入れられるものから始めてみましょう。
セルフケアの方法は下記ページに詳しく掲載されているため、こちらもご覧ください。
マインドフルネス瞑想
マインドフルネスとは、過去や未来ではなく、今・ここで起こっているものごとを体験し、ただ目の前のことに集中する状態を指します。
マインドフルネス瞑想は、自分の呼吸に集中しながらマインドフルネスの状態を保ち、心身に起こった変化などを振り返る方法です。
10~15分瞑想をおこなったのち、マインドフルネス瞑想をおこなった感想や心身に起こった変化などを紙に書き出します。
コーピング
コーピングとはストレスへ対処するための行動のことです。
- たとえば、
- 好きな音楽を聴く
- おいしいものを食べる
- ショッピングを楽しむ
- 思いっきり泣く
このように、ストレスへの対処として自分が意図的にしている行動はすべてコーピングと呼びます。
コーピングの内容は本格的なものでなく、たとえば「1から10までゆっくり数える」や「新聞紙を破る」などささいなことで問題ありません。
まずは自分のコーピングをすべて書き出したコーピングリストを作り、ストレスを感じたときにすぐにコーピングを実践できるようにしましょう。
詳しい実践方法やその他のコーピングについては、下記参考ページをご覧ください。
ストレッチ・軽い運動
運動には落ち込んだ気分を発散させたり、心身をリラックスさせたりする作用があります。
とくに有酸素運動(軽いランニング、サイクリングなど)は効果的ですが、ハードルが高い方は近所を散歩したり、少しでも外に出たりするだけでも効果があります。
質のよい睡眠
質のよい睡眠は、心身の疲労を回復させ仕事の生産性を高めます。反対に睡眠不足が続くと、集中力が低下したり、体がだるくなったりとさまざまな症状を引き起こします。
睡眠不足が続くことによってうつ症状が出やすくなるなど、メンタルヘルス不調につながるのも特徴です。
より質のよい睡眠をとるために、毎日の就寝・起床時刻を整えたり、就寝前にスマホ等のブルーライトを浴びたりしないようにしましょう。
わたしのセルフケア宣言
厚生労働省が提供するポータルサイト「こころの耳」では、日々のセルフケア役立つさまざまなコンテンツが紹介されています。
そのなかでも「わたしのセルフケア宣言」では、自分が関心のあるテーマを選びオリジナルの宣言を作成できます。
定期的に見返ることでセルフケアの定着につなげやすいため、ぜひ取り入れてみてください。
重症化する前に医療機関を受診しましょう
今回は適応障害について解説しました。うつ病などと混合されやすいですが、適応障害はストレス元が明確で、ストレスから離れると改善しやすいという特徴があります。
なんらかの症状がある場合は、早めに医療機関や相談窓口を利用しましょう。
参考ページ:相談窓口案内(厚生労働省)
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