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心理的安全性とは? 意味とGoogleが提唱する作り方・高める方法を解説

心理的安全性とは? 意味とGoogleが提唱する作り方・高める方法を解説
  • 「心理的安全性って最近ときどき聞くけどどんな意味?」
  • 「会社・職場の心理的安全性を高めるには何をすればいいの?」

    こんな疑問をお持ちの方のために、心理的安全性とは何かや、昨今注目されている理由を初心者向けに解説します。

    「部下がアイディアを出さないし、自発的に動いてくれない…」「ミスや失敗の報告が職場で円滑にされていない…」とお悩みの方も多いかもしれませんが、それらの背景にも心理的安全性が大きく関わっている可能性があります。

    みなさんの会社・職場でもできる心理的安全性の高め方も紹介しますので、ぜひ以下から詳細をお読みください。


目次

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  1. 心理的安全性とは?
  2. 心理的安全性が注目された背景
  3. Googleのプロジェクトアリストテレスとは?
  4. 優秀な従業員が多いチームであれば、生産性も高まるはずという誤解
  5. 成功するチームの条件は「優秀な従業員が多いか」ではなく、「チームがどのように協力しているか」
  6. Googleが分析した成功するチームを作る5つの要素
  7. 心理的安全性がチームを機能させるには最も大事な要素
  8. 心理的安全性を低下させる4つの不安
  9. 4つの不安に職場ではなく「従業員個人」が対応しようとする結果、職場はどんどん非効率化・硬直化していく
  10. 心理的安全性のない会社・低い職場のデメリット
  11. 心理的安全性が会社・職場にもたらすメリット
  12. メリット1.従業員が本質的な仕事に取り組めるようになるので、生産性が向上する
  13. メリット2.職場の風通しが良くなり、コミュニケーションと情報共有が活発になる
  14. メリット3.アイディアやイノベーションが生まれやすくなる
  15. メリット4.従業員の仕事へのモチベーションが高くなる
  16. メリット5.離職率が低くなり、採用活動もしやすくなる
  17. メリット6.致命的なトラブル・事故を抑制できる
  18. メリット7.問題の隠蔽・不正の発生を抑制できる
  19. 「大企業やクリエイティブな仕事でなければ、心理的安全性は必要ない」という誤解
  20. 心理的安全性の低さは重大なトラブル・事故を招く
  21. 人々の健康・命に直結する仕事は、多くの中小企業によって支えられている
  22. 致命的なトラブル・事故を防ぐために、中小企業こそ心理的安全性の確保が重要
  23. 心理的安全性の測定方法
  24. 心理的安全性が高い職場と、ぬるま湯職場・馴れ合い職場はまったくの別物
  25. 従業員の仲が良いかと、心理的安全性が高いかは別問題である
  26. 心理的安全性を高める方法
  27. 方法1.1on1ミーティング
  28. 方法2.会議や打ち合わせ・ミーティングの場で、特定の人に発言が偏らないように心がける
  29. 方法3.チェックイン・チェックアウト
  30. 方法4.従業員の多様性を認めてフェアな関係を築く
  31. 方法5.ミスや失敗を積極的に報告できる空気を作る
  32. マネージャーができる心理的安全性を高める手法
  33. 心理的安全性の概念を会社内・職場内に広める
  34. 心理的安全性の参考書籍
  35. 会社・職場の心理的安全性を高めて従業員のパフォーマンスを100%引きだそう!
  36. 健康経営に役立つ資料を無料でダウンロードできます!

心理的安全性とは?

心理的安全性とは?
心理的安全性(psychological safety)とは、組織のなかで不安を感じずに自分の意見や気持ちを積極的に発言できる状態のことです。

Googleが2015年に「チームの生産性・パフォーマンスを高める最も重要な要素は、心理的安全性である」と発表して以降、世界的に注目されるようになりました。

心理的安全性が高い組織は自由闊達にアイディアや意見交換がされるので生産性が高く、ミス・失敗の報告も積極的になされるため大きな事故・トラブルの発生率も低いとされています。

心理的安全性が注目された背景

ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授によって「心理的安全性」が提唱

心理的安全性は、ハーバード大学で組織行動学を研究しているエイミー・C・エドモンドソン教授によって、提唱された概念です。

エドモンドソン教授はスピーチフォーラム(TED)のなかで、心理的安全性のない組織ではどんな事態が引き起こされるのかや、心理的安全性の作り方・高める方法を紹介しました。

Googleのプロジェクトアリストテレスとは?

Googleはプロジェクトアリストテレスで、成功するチームの条件を調査した

Googleはプロジェクトアリストテレスで、成功するチームの条件を調査した
その後、Googleのプロジェクトアリストテレスによって心理的安全性の概念は一躍有名になり、世界中の企業や組織で取り入れられるようになりました。

プロジェクトアリストテレスとは、Googleが社内の数百ものチームを分析し、成功しつづけるチームの条件を導き出すために実施した労働改革プロジェクトです。

Googleの研究者たちは、以下のような特徴がチームの生産性やパフォーマンスに影響しているかどうかを探りました。

【プロジェクトアリストテレスで調査したチームの特徴】
  • 同じチームに属している社員は社外でも親しく付き合っているのか?
  • どれぐらいの頻度でいっしょに食事をしているか?
  • 外向的な社員が多いか、それとも内向的な社員が多いか?
  • 強いリーダーのもとで階層的な人間関係にしているか? それとも、フラットな人間関係か?

意外なことに、従業員同士の仲の良さやフラットな人間関係は生産性には直接影響していなかった

しかし、意外なことに以上のような特徴では、各チームの生産性に明確なちがいは表れませんでした。

たとえば、同じ生産性が高いチームでも、プライベートでも親しく付き合っている友人のようなチームもあれば、まともに会話するのは会議室だけで仕事以外では一切話さないチームも存在したのです。

つまり、従業員同士の仲が良いかどうかや、フラットな人間関係かどうかは、直接的には生産性に影響していないことになります。

参考ページ:「効果的なチームとは何か」を知る(re:Work)
参考ページ:グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ(現代ビジネスオンライン)

優秀な従業員が多いチームであれば、生産性も高まるはずという誤解

優秀な従業員が多いチームであれば、生産性も高まるはずという誤解
次に「優秀な従業員が多いチームだから、生産性が高いのではないか」との仮説が成り立ちます。

これは直感的にも説得力がある仮説です。

しかし、Googleのプロジェクトアリストテレスでは「優秀な従業員が多いと、優秀なチームになるはずだ」との一見正しそうな仮説も否定されました。

Googleでは1人の社員が複数のチームに重複して所属し、それぞれ仕事を進めています。

そこでほぼメンバーが同じチームであっても、不思議なことに生産性が高いチームと生産性が低いチームに分かれてしまう現象が観測できたのです。

つまり、あるチームでは優秀に働いている社員であっても、別のチームに入ると生産性が落ちてしまう可能性があることになります。

このことからGoogleは「誰がメンバーかはチームを有効に機能させるうえで、最も重要な要素ではない」と結論づけました。

成功するチームの条件は「優秀な従業員が多いか」ではなく、「チームがどのように協力しているか」

成功するチームの条件は「優秀な従業員が多いか」ではなく、「チームがどのように協力しているか」
私たちは成功しているチームや部署・会社を見ると、「あそこは優秀な従業員が多いから成功したんだ」と思いがちです。

しかし実際には、個々人のパフォーマンスよりも「チームとして有効に機能しているか」のほうが、仕事の成果や生産性には強く影響するということです。

いくら優秀な従業員でも、うまく協力できていないチームの中に入ると本来の実力を途端に発揮できなくなってしまいますし、逆に個々人の能力自体は傑出していないチームであっても、有機的に協力できていれば非常に大きな成果を出せることになります。

Googleが分析した成功するチームを作る5つの要素

そして、Googleはチームを成功させる決定的な要素を解明しました。

それが以下の5つです。

【Googleが提唱する成功するチームを作る5つの要素】
  1. 心理的安全性
  2. 相互信頼
  3. 構造と明確さ
  4. 仕事の意味
  5. インパクト

1.心理的安全性

心理的安全性
メンバーがリスクを恐れずに自由闊達に発言できる状態のことです。メンバー全体が失敗を恐れずにアイディアを出し、行動できるため、生産性が向上します。

他人と違う提案をしたり、ごく簡単な質問をしたりすることを躊躇するようなチームであれば、心理的安全性が高いとはいえません。

2.相互信頼

2.相互信頼
他のメンバーがクオリティの高い仕事を期限内に仕上げてくれることを、お互いに信じられる状態です。

相互信頼できているチームは、従業員同士が各々の知識・技術・経験を認め合い、尊重しています。

責任分担があいまいでそれぞれの業務の担当者が明確でなく、業務の優先順位や進捗状況を把握できない状況だと、相互信頼が機能していません。

3.構造と明確さ

業務のなかで要求されていることや意図、目的を実現するプロセスを、各メンバーが明快に理解できている状態です。

チームの目標、各メンバーの役割、実行計画の3つが、構造的にわかりやすくなっている必要があります。

責任の所在や意思決定のプロセス、担当者が不明確な状態では、構造と明確さが欠落しています。

4.仕事の意味

4.仕事の意味
自分がしている仕事の意味をメンバーが実感できている状態です。

経済的安定を得たい、家族の生活を支えたい、もっと成長したい、社会にとって有益な活動をしたい、など仕事をする意味はメンバーによって異なります。

どんな意味を仕事に見いだしてもよいですが、それをメンバー個々人が強く実感できているか否かがチームの生産性に関係します。

業務の割り当て時に従業員の能力開発や意欲が考慮されておらず、成果やマイルストーンの確認が定期になされていないチームでは、仕事の意味が希薄になっている可能性があります。

5.インパクト

自分たちの仕事が組織の目標達成にとって、良い変化(インパクト)をもたらしている状態のことです。チームの組織への貢献度を可視化することが、インパクトを実感するうえで重要です。

ほとんどの従業員が「自分の仕事は成長や進歩にほとんど寄与しない」と考えているチームでは、仕事のインパクトが乏しい状態です。



なお、これらの5つの要素が「あいまいでわかりにくい」と感じた方は、Googleが資料を配付しているのでこちらを閲覧することをオススメします。

参考資料(PDF):チームの効果性に関するディスカッションガイド(Google re:Work)

この資料では、以上の5つの要素が自分たちのチームで的確に機能しているかを把握するための兆候や質問例が記載されています。
多少わかりづらかった要素も、これらの具体的な質問例を見ることで理解しやすくなるはずです。

心理的安全性がチームを機能させるには最も大事な要素

そして、Googleはこれら5つのなかでも心理的安全性が、チームを機能させるうえで最も大事な要素だと結論付けています。

それではなぜ心理的安全性がチーム・組織にとって、そこまで重要なのでしょうか?

そこを理解するためにも、まずは会社・職場の心理的安全性を低下させる要因について考えてみましょう。

心理的安全性を低下させる4つの不安

会社・職場の心理的安全性が低くなる原因には、従業員が抱えている4つの不安が背景にあるとエドモンドソン教授は提唱しています。

  1. 無知だと思われる不安(IGNORANT)
  2. 無能だと思われる不安(INCOMPETENT)
  3. 邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)
  4. ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE

それぞれ具体的に紹介していきます。

1.無知だと思われる不安(IGNORANT)

無知だと思われる不安(IGNORANT)
上司や先輩・同僚に、業務について質問・確認しようとしたときに「こんなことも知らないのか」「前にも教えたでしょ?」などと返されないか、心配になった経験がある方も多いのではないでしょうか?

それが典型的な「無知だと思われる不安」です。

従業員が「無知だと思われる不安」に襲われて質問や確認を控えた結果、業務のミスや不備が起こる確率は高まります。

2.無能だと思われる不安(INCOMPETENT)

何らかのミスを従業員がしてしまったときには、「なんでそんなことも、まともにできないんだ」「こいつは仕事ができない」などと思われてしまわないかの不安が頭のなかをよぎります。

これが「無能だと思われる不安」です。

「無能だと思われる不安」を強く感じた従業員は些細なミスや失敗・トラブルでも報告することを恐れるようになりますし、深刻化するとミスを隠蔽したり認めなかったりといった行動を取ってしまいます。

3.邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)

自分が発言することで「議論を邪魔してしまうのではないか」「チーム内の空気が悪くなってしまうのではないか」などと恐れてしまう感情が、「邪魔をしていると思われる不安」です。

この「邪魔をしていると思われる不安」に従業員が囚われてしまうと、事故・トラブルにつながる違和感なども報告されなくなりますし、業務・ビジネスを改善する提案も出てこなくなります。

4.ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)

ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)
自分の意見を発言しようとしたときに、「会社の方針に対して批判的だ」「ネガティブな意見ばかり出している」などと受け取られないか気にしてしまって、結局その意見を自分で封じ込めてしまった経験はないでしょうか?

それが「ネガティブだと思われる不安」です。

職場の和を乱してしまうのではないか、という懸念から従業員が発言しなくなる傾向は、とりわけ日本企業において顕著であり、闊達な議論を妨げてしまいます。

新たな気づきやアイディアも提案されづらくなりますので、会議やミーティングの停滞を招きます。

4つの不安に職場ではなく「従業員個人」が対応しようとする結果、職場はどんどん非効率化・硬直化していく

心理的安全性のない会社では、質問・確認・発言をせず、ミスやトラブルに気付いていないふりをしたり隠蔽したりするのが最適な行動になってしまう

以上の4つの不安を「従業員個人」が解消する方法はとても簡単だ、とエドモンソン教授は言います。

つまり、自分が無知だと思われたくなかったら、不明点や確認点がもしあっても何も質問しなければよいのです。

無能だと思われたくなかったら、ミス・トラブルがあっても報告せず、気付いていないふりや隠蔽をすればよいのです。

上司や同僚に仕事の邪魔をしていると思われたくなかったら、違和感や異なる意見があっても発言しなければよいのです。

批判的だ・ネガティブだと思われたくなかったら、現状を批判せず自分の意見を封じこめればよいのです。

心理的安全性がない会社や低い職場では、以上のような行動・振る舞いこそが、自分の身や立場を守るうえで最適な行動になってしまいます。

従業員個人の人格や能力とは関係なく、心理的安全性の低い職場では自然と風通しが悪くなり停滞と硬直化を招く

それは従業員個々人の意識の高さや仕事への熱意、倫理観とは関係なく、構造上そのようなバイアスが職場全体にかかってしまうということです。

従業員がこのように萎縮した状態で働いている職場は、当然風通しが悪くなりますし、仕事に対する向上心や学びも少なくなっていきます。

また、情報の共有が円滑に進まないため、業務の効率も著しく悪化します。

斬新なアイディアやイノベーションが生まれることも少なくなるため、会社に長期的な停滞と硬直化を招くことでしょう。

心理的安全性のない会社・低い職場のデメリット

会社・職場の心理的安全性が低いまま放置していると、以下のような深刻なデメリットが発生します。

【心理的安全性のない会社・低い職場で起こるデメリット】
  1. 従業員が本質的な価値を生み出す仕事よりも、自己の印象操作や「やってる感」の演出にかまけてしまう
  2. 事業・業務改善のアイディアが出されず、イノベーションが起きないので停滞してしまう
  3. 従業員のモチベーションや仕事への熱意が低下する
  4. 会社全体の生産性が低下し、商品・サービスの質や売り上げも伸び悩む
  5. 離職率が上昇して、従業員の負担が増える
  6. 従業員が違和感に気付いても報告しなくなるので、致命的なトラブルや事故が発生してしまう
  7. 問題の隠蔽や不正が横行する


心理的安全性のない会社・低い職場は活動が停滞し、長期的には事業の継続も難しくなってしまうため、改善が急務です。

心理的安全性が会社・職場にもたらすメリット

それでは、心理的安全性を高めると、会社・職場にはどんなメリットが生まれるのでしょうか? 具体的に紹介していきます。

【心理的安全性のメリット】
1. 従業員が本質的な仕事に取り組めるようになるので、生産性が向上する
2. 職場の風通しが良くなり、コミュニケーションと情報共有が活発になる
3. アイディアやイノベーションが生まれやすくなる
4. 従業員の仕事へのモチベーションが高くなる
5. 離職率が低くなり、採用活動もしやすくなる
6. 致命的なトラブル・事故を抑制できる
7. 問題の隠蔽・不正の発生を抑制できる

メリット1.従業員が本質的な仕事に取り組めるようになるので、生産性が向上する

心理的安全性が低い会社・職場では、従業員が本来の仕事よりも「仕事をしているふり」や「やってる感」の演出に走るようになる

心理的安全性が低い会社・職場では、従業員が本来の仕事よりも「仕事をしているふり」や「やってる感」の演出に走るようになる
先述したように「無知だと思われる不安」・「無能だと思われる不安」・「邪魔をしていると思われる不安」・「ネガティブだと思われる不安」の4つの不安が、職場の心理的安全性を低下させます。

4つの不安に従業員個人が適応した結果、彼らは自分を守るために「何も質問しない」「間違いがあっても気付かないふりをするか、隠蔽する」「アイディアを出さず発言しない」「現状に問題提起せず、自分の意見を封じこめる」といった振る舞いをするようになります。

エドモンドソン教授はこれらの振る舞いを「自己印象操作」と呼んでいます。

心理的安全性の低い職場では、多くの従業員が本質的な価値を生み出す仕事よりも、自分の印象を操作することのほうに集中するようになるのです。

顧客に良質な商品・サービスや付加価値を届けることがおろそかになっているのに、社内の数人しか読まない資料作りに力を注ぐようになる…などの行動は、本質的な仕事と自己印象操作の転倒の最たるものだといってよいでしょう。

心理的安全性のない会社・低い職場では、従業員が無意識のうちに「仕事をしているふり」や「やってる感」の演出にばかり時間と労力を割くようになるので、生産性が著しく低下してしまいます。

心理的安全性を高めることで、本質的な仕事に集中できるようになる

心理的安全性を高めることで、本質的な仕事に集中できるようになる
社内の心理的安全性を高めて、恐れずに仕事ができるようになれば、従業員は自己印象操作に時間と労力を割く必要がなくなります。

顧客に質の高い商品・サービスや付加価値を届ける仕事に注力できますし、バックオフィスの部署であれば、社内業務をより効率的・円滑にする改善作業に集中できるでしょう。

本質的な仕事に従業員全員が取り組めますので、会社・職場全体の生産性が飛躍的に上昇します。

メリット2.職場の風通しが良くなり、コミュニケーションと情報共有が活発になる

2.職場の風通しが良くなり、コミュニケーションと情報共有が活発になる
心理的安全性が低い会社・職場では、「下手なことを言ったら怒られそうだな…」「どうせ発言しても理解されないから無駄だ」との懸念から、上司と部下などの立場が違う者同士の意見交換が少なくなります。

また、コミュニケーション不足から部署間の分断も大きくなり、セクショナリズム(横のつながりが弱くなり、部署間の連携が取れない状態)も進行するでしょう。

そうすると会社の縦のラインでも横のラインでも、情報の流動性が失われて業務の効率性が著しく阻害されます。

また、重要な情報が共有されないと深刻なトラブルや事故も発生しかねません。

心理的安全性を向上させ、誰もが不安なく発言・提案できる状態にすることで、職場の風通しが良くなります。

コミュニケーションと情報共有が円滑に進み、業務も効率化するでしょう。

メリット3.アイディアやイノベーションが生まれやすくなる

3.アイディアやイノベーションが生まれやすくなる
心理的安全性がない会社・職場では従業員が萎縮してしまい、積極的に発言できない状態に陥ってしまいます。

「発言して悪目立ちしたくない…」「自分の意見を言っても面倒がられるだけだろうな…」という雰囲気が充満している職場では、多様な意見やアイディアが生まれるはずがありません。

現在、日本は少子高齢化で人口が急減していますし、企業数も減少の一途をたどっています。

これまでと同じ業務・事業を漫然と続けていても、売り上げはいずれ頭打ち・右肩下がりになるのは確実ですから、長期的に会社を存続させたいのであれば業務・事業の改善やイノベーションは不可欠です。

心理的安全性を向上することで、社内で従業員が自由闊達に発言できるようになり、多様な意見・アイディアを会社が吸い上げられます。

業務の改善や革新的なイノベーションも起こりやすくなり、会社の成長性を大きく伸ばせるでしょう。

メリット4.従業員の仕事へのモチベーションが高くなる

4.従業員の仕事へのモチベーションが高くなる
心理的安全性のない会社・職場は風通しが悪く、良くない緊張感が漂っていますから、そこで働くのが苦痛になります。

また、会社の縦のライン(上司・部下間)と横のライン(部署間)が断ち切られているため、社内で一体感を持つことも難しいでしょう。

さらに創意工夫の余地が仕事から失われるため、「とりあえず、言われたことだけをこなしておくか…」といったマインドが従業員に生まれ、モチベーションは停滞します。

逆に心理的安全性が高い会社・職場では、新人や部下も自由に発言ができるので、自然体で働けるようになります。

部署間の横のつながりも強固になり、効果的に連携しながら事業を推進できるでしょう。

自分のアイディアや創造性を活かしやすい職場となるので、従業員のモチベーションも高くなります。

メリット5.離職率が低くなり、採用活動もしやすくなる

心理的安全性のない会社・低い職場は離職率が高くなるので、人材が定着せず採用コストを浪費する負のループに陥ってしまう

心理的安全性のない会社・低い職場は離職率が高くなるので、人材が定着せず採用コストを浪費する負のループに陥ってしまう
先述したように心理的安全性のない会社・低い職場は従業員のモチベーションが湧きづらく、そこで働くのが苦痛になるので必然的に退職者が増えます。

そして、退職者が出るとその穴を残ったメンバーで埋めなければなりませんので、職場の業務負担は重くなります。

また、新たな人材を確保するためのお金・時間・労力などのコストも莫大です。

従業員を1人採用するのにかかるコスト(採用単価)は、おおむね以下のとおりです。

●新卒採用の1人あたりの採用コスト(採用単価):93.6万円
出典:就職白書2020(株式会社リクルートキャリア)

●中途採用の1人あたりの採用コスト(採用単価):103.3万円 
出典:就職白書2020(株式会社リクルートキャリア)

●アルバイト・パートの1人あたりの採用コスト(採用単価):5.2万円
出典:『株式会社ツナグ・ソリューションズ アルバイト・パート1名の採用コストは4年で1.7倍上昇! 人材確保のポイントは「応募時の対応」。』(データは2014年時点)


また、仮に新卒社員が1年で退職してしまった場合のコストは280万円にもおよび、損失を回収するには1400万円もの売上増を達成しなければならないとの試算もあります。

出典:部下1人の退社に伴う会社の損失(ダイヤモンドオンライン)

心理的安全性が低く人材が定着しない会社・職場は、以上のようなコストを浪費することになりますので、売り上げ・利益も増やしづらくなり、従業員の賃金・賞与を上げることも難しくなるでしょう。

そして賃金が上がらない結果、さらに退職者が増える…という負のループに陥ってしまうのです。

心理的安全性が高い会社・職場では離職率が低くなるので、会社全体の生産性も向上し多くの求職者を集められる

心理的安全性が高い会社・職場では離職率が低くなるので、会社全体の生産性も向上し多くの求職者を集められる
逆に心理的安全性が高い会社・職場では、自分を偽ることなく自然体で働けるのでリラックスできます。

職場が苦痛な場所でなくなれば当然離職率は低下しますし、この会社で長く働こうという意識も芽生えるでしょう。

実際、Googleのアリストテレスプロジェクトでは、心理的安全性の高いチームはそうでないチームと比較して、離職率が低いことが明らかにされています。

参考ページ:「効果的なチームとは何か」を知る(Google re:Work)

離職率が低くなれば、採用活動にかかる費用・時間・労力を節約できますので、より重要な業務に集中しやすくなります。会社全体の生産性も向上するでしょう。

また、働きやすい職場であることが伝われば、求職者からの印象も良くなりますし、既存社員からの紹介で人材を採用する、リファラル採用も促進できます。

従業員が定着し、求職者が集まる会社にするには、心理的安全性の向上が必要不可欠なのです。

メリット6.致命的なトラブル・事故を抑制できる

心理的安全性のない会社・職場では、ミスや違和感の発見・報告が遅くなるので、重大な事故やトラブルの発生率が高くなる

心理的安全性のない会社・職場では、ミスや違和感の発見・報告が遅くなるので、重大な事故やトラブルの発生率が高くなる
心理的安全性のない会社・低い職場では、従業員が違和感やおかしい点に気付いたとしても、萎縮して発言・報告を控えるようになりますから、組織としてミスやトラブルを発見するのが遅れます。

早期に発見・報告・対応されていれば何の問題もなかった軽微なミスでも、放置されているあいだに深刻さを増し、どうしようもない深刻な事態にまで発展してから露見することになりがちです。

とりわけ病院・介護サービス・保育園・幼稚園などの人の命をあずかる業種では、大きなトラブル・事故が起きると痛ましい被害が発生します。

また、運輸・物流業や建築、土木建設業、製造業などの工場でも、大きなトラブル・事故は人の命や健康に直結することになりかねません。

また、それら以外の業種でも単純なミスが報告されなかったばかりに大ごとになり、多大な損害を招いてしまったケースは多数存在します。

ミスの報告が多い職場ほど、心理的安全性が高くて良いチーム

ミスの報告が多い職場ほど心理的安全性が高くて、良いチーム
それに対して、心理的安全性が高い会社・職場では積極的にミスや気付きを報告しあえるので、何か問題があっても早期解決が可能です。

ミス・失敗をすると過剰にとがめられる職場では、報告が減ったり隠蔽が増えたりするだけなので、得策とは言えません。

実際、エドモンドソン教授はある病院の複数のチームを調査・比較した結果、心理的安全性が高く良いチームほど、意外なことにミスの記録が多かったと発表しています。

つまり、「ミスの記録が多い」→「積極的にミスが報告されている」ということです。

ミス・失敗を従業員が即座に報告し、対策をすぐに話し合える体制こそが、致命的なトラブル・事故を予防することになるのです。

メリット7.問題の隠蔽・不正の発生を抑制できる

不祥事を起こした企業は、心理的安全性が低い職場と同じ共通点を抱えている

不祥事を起こした企業は、心理的安全性が低い職場で起きやすい共通点を抱えている
心理的安全性の低い会社・職場では、失敗や目標の未達成が許されない空気となるので、従業員たちは失敗を隠したり、不正に手を染めたりする確率が高くなります。

「問題の隠蔽や不正に手を染めても、上司・会社が言うことは絶対に達成しなければならない」というバイアスが従業員にかかるからです。

東京海上ディーアール株式会社は2020年1月以降に発生した企業不祥事を分析するなかで、不正に手を染めた企業は以下のような共通点があることを明らかにしました。

【不祥事を起こした企業の共通点】
  • 責任者・担当者が不正行為を認識していたにも関わらず、上層部に報告しなかった。
  • 担当者が不正行為の認識や疑念を持っていたにも関わらず、上司の指示に従わなければならないと考えて当該行為を継続していた。
  • 担当者が不正行為の認識があっても、そのこと自体は経営層の指揮命令、判断に由来するものであり、自らの責任に帰属するものではないと考えていた。
  • 内部通報制度が機能しておらず、不正行為の是正の機会がなかった。
  • 売上目標が偏重により、不正行為が黙認されていた。


以上の共通点は、いずれも心理的安全性のない会社・低い職場で起きやすい行為です。

実際に多くの企業不祥事の裏側には心理的安全性の低さがあり、年間180~200社がコンプライアンス違反で倒産している

実際に多くの企業不祥事の裏側には心理的安全性の低さがあり、年間180~200社がコンプライアンス違反で倒産している
実際、多くの有名な企業不祥事の裏側には、会社・職場全体の心理的安全性の低さがあったことが指摘されています。

参考ページ:「ものが言えない」恐怖で人を縛る会社の怖い末路(東洋経済オンライン)

問題の隠蔽や不正が常態化するほど、それが明るみに出たときのダメージも深刻になります。

会社の信頼性・ブランドも失墜し、売り上げにも大きな悪影響があるでしょう。

また、帝国データバンクの調査によれば、毎年180~200社を超える企業がコンプライアンス違反を原因に倒産していますから、会社自体が存続できない自体にもなりかねません。

出典:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020年度) (帝国データバンク)

このように心理的安全性の高低は、問題の隠蔽や不正の発生と密接な関係があります。

会社・職場の心理的安全性を高めることで、問題があればすぐに報告され、不正を許さない組織を実現できます。


以上が心理的安全性を高めるメリットです。

ただし、自分の会社・業種でも本当に当てはまるのか、疑問を持っている方もいるでしょう。

そこで、これから心理的安全性に関するよくある疑問に対して回答していきます。

「大企業やクリエイティブな仕事でなければ、心理的安全性は必要ない」という誤解

ここまで記事を読んで、以下のような疑問・感想を持っている方もいるかもしれません。

  • 「心理的安全性の向上が効果的といっても、結局はGoogleのような大企業の話なんだから、ウチのような中小企業には当てはまらないんじゃないの?」
  • 「私たちの職場では今までと同じ仕事をずっとやり続ければいいんだから、イノベーションや創意工夫なんていらないよ」

確かに心理的安全性に着目したGoogleは世界屈指の大企業ですから、そのやり方が自分たちの職場でも有効に働くか疑問視するのはむしろ自然な思考です。

ですが、心理的安全性は決して大企業のみに必要な要素ではありません。

むしろ中小企業ほど心理的安全性が必要不可欠な職場が多いとも言えます。

なぜなら心理的安全性は事故・トラブルの発生率にも大きく関与するからです。

心理的安全性の低さは重大なトラブル・事故を招く

心理的安全性が低い職場では、従業員が違和感に気付いても報告しなかったり放置したりする確率が増加する

心理的安全性が低い職場では、従業員が違和感に気付いても報告しなかったり放置したりする確率が増加する
先述しましたが、心理的安全性のない会社・低い職場は最悪の場合、重大なトラブルや事故まで引き起こしかねません。

エドモンドソン教授は、心理的安全性の低さが致命的な事故を招くことを、ある病院を例に出して説明しています。

【心理的安全性の低い職場が致命的な事故に直結する事例】
ある病院で夜勤をしていた看護師が、1人の患者に処方された薬剤の投薬量が通常よりも多いことに気付きました。

その看護師は自宅にいる担当医に電話して「この投薬量で問題ないんでしょうか?」と質問しようかと悩みましたが、以前にその医者から「こんな夜中に連絡してくるな!」と怒鳴られたことを思い出し、結局連絡するのをやめたそうです。

このような状況では、いつ人命にかかわる医療事故が起きてもおかしくありません。

違和感や不調を感じても気軽に発言できない会社・職場では、致命的なトラブルや事故の発生確率が高まる

そして、心理的安全性の低さが致命的なトラブル・事故の温床になるのは、病院だけとは限らないのです。

  • 工場でミスや不調・違和感に気付いた社員がいても、何も言わなかった
  • 会社全体で進めているプロジェクトに大きな不安要素や懸念点があるのに気付いていたが、批判的に取られる恐れがあったため、発言を控えた

以上のような例は枚挙に暇がありません。

心理的安全性のない会社・低い職場では、従業員の誰かが違和感に気付いても発言するのをためらってしまうため、深刻なトラブル・事故の発生率が高まってしまうのです。

とりわけ人々の生活に密接している職場では、トラブル・事故の発生は健康・命に関わる事態になります。

人々の健康・命に直結する仕事は、多くの中小企業によって支えられている

人々の健康・命に直結する仕事は、多くの中小企業によって支えられている
そして人々の生活に不可欠なエッセンシャルワークは、中小企業や中小規模の組織によって、その多くが担われています。

  • 病院などの医療施設
  • 介護サービス
  • 保育園・幼稚園・学校などの教育機関
  • 運輸・物流サービス
  • 電気・ガス・水道などの工事・メンテナンス、ゴミ収集業などの生活インフラ
  • スーパーなどの小売店

これらの業種で深刻なトラブル・事故が発生すると、人々の生活が著しく阻害され、最悪の場合は健康・命が関わる事態になります。

また、飲食店や食品製造業も中小企業が多いですが、これらの業種も食中毒や異物混入などの事故が起こると深刻な被害・損害が発生します。

建築・土木の建設現場や製造業の工場もひとたび甚大なトラブル・事故が起きると、人命が失われるリスクがありますが、これらの現場も多くの中小企業によって支えられています。

致命的なトラブル・事故を防ぐために、中小企業こそ心理的安全性の確保が重要

致命的なトラブル・事故を防ぐために、中小企業こそ心理的安全性の確保が重要
先述したように、人々の命や健康に直結する仕事ほど、地域密着の中小企業や中小規模の組織が担い手になっています。

それらの会社で、心理的安全性が低いことが原因で、授業員がミス・違和感に気付いても報告しなかったり、気付かないふりをしたりすると、致命的な事態に陥るのは言うまでもないでしょう。

心理的安全性は従業員のモチベーションはもちろん、深刻なトラブル・事故の発生率にも大きく関わりますので、むしろ中小企業こそ心理的安全性の向上に注力すべきなのです。

心理的安全性の測定方法

会社・職場の心理的安全性の高さをチェックする質問

自分の会社・職場の心理的安全性が高いか低いかをチェックしたいときは、以下の各質問に回答してみてください。

【心理的安全性の高さをチェックする質問】
  • チームの中でミスをすると、たいてい非難される
  • チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
  • チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある
  • チームに対してリスクのある行動をしても安全である
  • チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
  • チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない
  • チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる

以上の質問に対してポジティブな回答が多ければ、みなさんの会社・職場の心理的安全性は高く、ネガティブな回答が多ければ心理的安全性は低いと言えます。

心理的安全性が低い職場の会議・打ち合わせ・ミーティングの特徴

また、会議・打ち合わせ・ミーティングで以下のような特徴が当てはまるのであれば、その会社・職場の心理的安全性は低い傾向にあります。

【心理的安全性が低い職場の会議・打ち合わせ・ミーティングの特徴】
  • 上司や一部の従業員ばかりが発言しており、発言時間が偏っている
  • 素朴な疑問や質問を提起するのをためらってしまう
  • 新人が発言しづらい、あるいは新人の意見が汲み取られない傾向が強い
  • ミスや課題の報告をしづらい雰囲気である
  • 「なぜそんなことをしたんだ」などの他の従業員の責任を追及するような発言が多い
  • 意思決定において、メンバーに意見やフィードバックを求める機会がない
  • メンバーの発言が途中でさえぎられることが多い

以上の特徴に当てはまるようであれば、会社・職場の心理的安全性を高める努力が必須です。

心理的安全性が高い職場と、ぬるま湯職場・馴れ合い職場はまったくの別物

心理的安全性が高い職場と、ぬるま湯職場・馴れ合い職場はまったくの別物
ここまで読み進めて「心理的安全性を高めると、職場から緊張感が失われてぬるま湯職場になるのでは?」「馴れ合いが加速するのでは?」との疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

ですが、心理的安全性が高い職場は、ぬるま湯状態の緩い雰囲気の職場や、馴れ合いの職場とは根本的に異なります。

ぬるま湯職場・馴れ合い職場は従業員に向上心がなく、現状を追認して惰性で業務を続けている状態ですが、心理的安全性が高い職場は常に現状を良くするために積極的に発言・議論しようとします。

パワハラや悪い緊張感がないという点では一緒ですが、心理的安全性が高い職場とぬるま湯職場・馴れ合い職場は目指しているベクトルがまったく逆なのです。

本質的な議論や改革を先送りしようとするぬるま湯職場・馴れ合い職場と比較して、心理的安全性が高い職場ではクリティカルシンキングが求められます。

従来のやり方を大きく変える提案であっても本気で向き合う必要があるため、心理的安全性が高い職場は決して楽な職場ではありません。

従業員の仲が良いかと、心理的安全性が高いかは別問題である

「ウチの会社(職場)はみんな仲が良いから、心理的安全性は高いと言えそうだ」と考えている方もいるかもしれません。

ですが、実際には仲の良さと心理的安全性の高低は切り分けて考える必要があります。

従業員同士の距離が近くて仲が良いがゆえに、職場の空気を壊すことを恐れて、自分の気づきや発言を控えることもありえるからです。

心理的安全性が高い職場は「空気を読まない提案・発言でも自由にできること」が特徴ですから、仲の良い空気を壊したくなくて発言を控える傾向が強い日本の職場とは、むしろ真逆です。

仕事中や会議中は空気を読んで発言することを避け、雑談や飲み会の場でしか、会社や業務についての意見や本音を言えないようであれば、いくら仲が良くても、その職場の心理的安全性は低いことになります。

※もちろん、仲の良さと心理的安全性の高さが両立しないわけではありません。従業員同士の仲が良くて、なおかつ、ざっくばらんに意見を交換できる心理的安全性が高い職場も存在するでしょう。

心理的安全性を高める方法

それでは、会社・職場の心理的安全性を高めるには具体的に何をすればよいのでしょうか?
心理的安全性を向上させる方法を紹介していきます。

方法1.1on1ミーティング

上司と部下の1対1の面談を高頻度で繰り返す1on1ミーティングは、Googleなどの多くの先進企業で取り入れられている

上司と部下の1対1の面談を高頻度で繰り返す1on1ミーティングは、Googleなどの多くの先進企業で取り入れられている
Googleなどの先進企業が心理的安全性向上のために実際に取り入れている施策が1on1ミーティング(ワン・オン・ワン・ミーティング)です。

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1でおこなう定期的なミーティングのことです。1回あたり15分~30分程度の短い時間で、毎月・毎週などの高頻度で繰り返すことが特徴です。

人事評価面談とは違いますし、事業や業務の方針を打ち合わせるための時間でもありません。

1on1ミーティングの主な目的は、部下の成長のサポートと人間関係の活性化にあります。

1on1ミーティングで話すと効果的な話題

1on1ミーティングでは上司は主に部下の話を聞く側に専念して、以下のような話題について部下に問いかけます。

【1on1ミーティングで話すと効果的な話題】
  • チームの方針・戦略の共有と意見交換
  • 成功した仕事への賞賛と失敗した仕事へのフォロー
  • 成功した仕事がなぜうまくいったのかの意見交換
  • どんな仕事の進め方が好きか、やりやすいかのヒアリング
  • 現在の業務で気になっている点や不安な点はないか
  • キャリアについての相談・アドバイス
  • 趣味や現在興味を持っていることのヒアリング

以上の話題を話し合うことで、上司・部下の双方が歩み寄りと自己開示をできるようになり、心理的安全性が高まります。

1on1ミーティングの参考書籍

1on1ミーティングについては多くの解説書が出版されていますので、関心を持った方はこれらをお読みいただくのがオススメです。

方法2.会議や打ち合わせ・ミーティングの場で、特定の人に発言が偏らないように心がける

会議や打ち合わせ・ミーティングの場で、特定の人に発言が偏らないように心がける
いつも上司や一部の従業員しか発言していないような会議・打ち合わせ・ミーティングでは、なかなか新しい視点やアイディアも生まれないものです。

できるだけ発言の時間が各メンバー間で均等になるように、「●●さんはこの件についてどう思う?」などと質問するように心がけるとよいでしょう。

とりわけ新入社員や若い社員、非正規雇用・パート・アルバイトのスタッフなどは発言を控える傾向にあるため、意識的に発言を引き出すようにしてください。

方法3.チェックイン・チェックアウト

チェックイン・チェックアウト
先ほどミーティング・会議では発言の時間が一部の人に偏らないようにすべきとお話ししましたが、その際の有効な手法がチェックイン・チェックアウトです。

チェックインとは、会議やミーティングの最初に、参加者全員が自分の近況や最近の業務の進捗、気になっていることを一言ずつしゃべる時間を設けることです。

逆にチェックアウトでは、会議の終了時に参加者全員が一言ずつ、感想や議題のまとめ、今後の意気込みなどをしゃべります。

参加者全員が話す時間を意図的に設けることで、アイスブレイクトーク(会議やミーティングの空気を和ませるためのトーク)になりますし、地位や所属に関係なく参加者が話しやすくなります。

チームや職場の雰囲気や風土を変えるには、日々のコミュニケーションの質を少しずつ変えていくしかありません。

一見取るに足らない手法に思えるかも知れませんが、会議・ミーティングの空気を変えたい方はぜひ試してみてください。

方法4.従業員の多様性を認めてフェアな関係を築く

従業員の多様性を認めてフェアな関係を築く
昨今、ダイバーシティやSDGsの推進などによって日本企業にも多様性が求められる時代になっていますが、実際に多様性が実現しているとは言いがたい職場もまだまだ多いです。

年齢・性別や役職、正規社員・非正規社員、パート・アルバイトの区別なく、互いの個性を尊重してフェアな人間関係を構築することが心理的安全性の向上には不可欠です。

各従業員が対等な立場で意見やアイディアを出せる風通しの良い職場を目指しましょう。

方法5.ミスや失敗を積極的に報告できる空気を作る

ミスや失敗を積極的に報告できる空気を作る
先述したとおり、会社・職場の心理的安全性の低さは致命的なトラブルや事故を招いてしまいます。

従業員がミスや失敗を報告するのをためらうような環境では、いつ深刻な事態が起きても不思議ではありません。

そのため、ミスや失敗をとがめず、積極的に報告しあえる空気を形成しましょう。

上司やリーダー自らが、「自分もミスや失敗を犯すことはもちろんあるので、気付いたら指摘してほしい」などと呼びかけるのも効果的です。

マネージャーができる心理的安全性を高める手法

一般社員がどれだけ心理的安全性を高めようとしても限界があるので、マネージャーの働きかけは不可欠

一般社員がどれだけ心理的安全性を高めようとしても限界があるので、マネージャーの働きかけは不可欠
心理的安全性が高い会社・職場を作るには一般の従業員の協力も不可欠ですが、やはり影響が大きいのは経営トップ層やマネージャー、リーダーの言動です。

いくら一般社員が「心理的安全性を高めるために、積極的に発言しないと…」と考えて行動したとしても、マネージャー側が「面倒なことを言い出すな」「余計な仕事を増やすな」といった態度を取ると、その社員は萎縮してしまうでしょう。

つまりマネージャーは会社・職場の心理的安全性の高低に大きく関わる立場にいます。
マネージャーはぜひ以下のような職場内の心理的安全性を高めるための手法を実践してみてください。

【メンバーと真剣に対話する】

  • メンバーとの会話中やミーティング中は相手の目を見て、集中して聴く(手元のノートパソコンに目線を落とさない)
  • 話を聴くときは、相手に顔を向けるか少し体を乗り出すようにして、傾聴の姿勢を示す
  • 話を聴いていることを示すために、要所でうなずく

【従業員の発言・意見を理解していることを示す】

  • 「なるほど」「おっしゃることはわかります」など話の内容を理解していることを言葉で示す
  • メンバーの発言・意見を端的に要約して、互いに理解が一致していることを示す(ただし、メンバーの発言を途中で遮って要約するのはNG)

【相手を受け入れる姿勢を示す】

  • 自分の仕事の進め方や好みを各メンバーに伝えて、メンバーにも自分の仕事のやり方をみんなに共有してもらうようにする
  • 気付かないうちに否定的な表情を浮かべていないか注意する
  • メンバーの貢献に対して感謝の意を示す

【意思決定の過程でメンバーを尊重する】

  • チームメンバーに意見やフィードバックを求める
  • 意思決定の過程や根拠をメンバーに詳しく説明する
  • 他のメンバーの発言を途中で遮らない
  • 自分が意見を述べたら、他のメンバーから別の意見や異論がないか発言してもらう

【自己開示や自分の弱みを見せる】

  • 自分もミス・失敗することをメンバーに伝えて、ミス・失敗したらすぐに報告してもらうように促す

心理的安全性の概念を会社内・職場内に広める

心理的安全性の認知度はまだまだ低いのが現状なので、職場に概念を浸透させることが重要

心理的安全性の認知度はまだまだ低いのが現状なので、職場に概念を浸透させることが重要
心理的安全性の概念は大企業や一部の先進的企業では認知が広がっていますが、地方の中小企業などではあまり知られていないのが実情です。

しかし先述したように、心理的安全性は決して大企業や先進的企業だけに必要なものではなく、地域・人々の生活と密着した地方の中小企業や小規模組織にとっても必要です。

もちろん心理的安全性を高めるにはマネージャーや従業員が日々の言動やコミュニケーションに気を付けることが最も重要ですが、心理的安全性の概念を組織に浸透させるのも効果的です。

「職場の風通しを良くしよう」と声がけをしても内容があいまいすぎて、各従業員がどういった行動を取ればいいのか想像できませんが、「心理的安全性を高めよう」と言語化できれば日々の実践に直結させやすくなります。

自分がマネージャー層であれば、心理的安全性について朝礼・会議・ミーティングの場などでチームメンバーに簡単にレクチャーするとよいでしょう。

心理的安全の基礎を簡単に学べる動画

【心理的安全性】誰もが率直に意見を言える環境とは?組織改革を進めるカギ?超重要概念を学ぶ
以上のような心理的安全性について簡単に解説している動画などをメンバーに共有するのも効果的です。

こちらは『心理的安全性のつくりかた』などの著書がある、ZENTech株式会社チーフサイエンティストであり慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所研究員の石井遼介さんが解説している動画です。

心理的安全性を知らない人向けにわかりやすく解説しているのでオススメです。

心理的安全性の参考書籍

心理的安全性については、エドモンドソン教授の著作を含めて、多くの解説書が出版されていますので、関心を持った方はこれらをお読みいただくのがオススメです。

会社・職場の心理的安全性を高めて従業員のパフォーマンスを100%引きだそう!

会社・職場の心理的安全性を高めて従業員のパフォーマンスを100%引きだそう!
  • 「自分の職場の従業員はみんな働きづらそうにしている…」
  • 「自発的に動く従業員が少ないし、会議やミーティングでも提案が出ない…」

このようなお悩みを持っている方も多いと思いますが、その根本原因は、会社・職場の心理的安全性が低いことにあるのかもしれません。

心理的安全性が低い会社・職場は、従業員全員のパフォーマンスが下がるため生産性も悪化しますし、離職率が増えるので事業を維持するだけで精一杯の状態になりがちです。

心理的安全性の向上は一朝一夕にはできませんし、組織の雰囲気・風土を変えるのは大変ですが、費用をかけずにどの会社でも取り組める施策です。

ぜひみなさんの会社でも、心理的安全性を意識した職場の雰囲気づくりに取り組んでみてください。
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