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『「幸せ」をつかむ戦略』健康経営書籍レビュー

『「幸せ」をつかむ戦略』健康経営書籍レビュー
健康経営に関する本・書籍をご紹介。 今回は『「幸せ」をつかむ戦略』(著:富永朋信)の読みどころやポイントを紹介します。
著者と行動経済学者のダン・アリエリーの対話方式で書かれている点が、非常に特徴的な本です。

「従業員にとって幸せとは何なのか?」「従業員が幸せに感じる職場をつくるためにはどうしたらいいか?」といった経営者・管理職目線での疑問を、具体例を交えて解説しています。
【特に重要なポイント・内容】
  • 人間が感じる幸福には以下の2タイプがある。
タイプ1.睡眠欲、食欲、性欲など、人間の根源的な欲求が満たされることによる幸せ。行動からすぐに幸せを実感できる。
タイプ2.他者との関係を築くことや、困難を達成することにより訪れる幸せ。1つの行動のみで実感することはほとんどない。
     行動を連続して行っている間は、行動自体が負荷となりポジティブな感情にはなりにくいが、達成すると大きな幸せ
           を実感できる。

  • 2つの幸福のうち、たとえばマラソンようにやりがいを感じられるタイプ2の幸福のほうが重要である。理由は幸せとともに満足感・達成感・過去との結びつきも実感できるからである。

  • 多くの幸せを実感するためには、自分の力が及ぶことと及ばないことを区別し、自分の力が及ぶことだけに集中すべき。たとえば交通渋滞や満員電車は自分の力が及ばないことであり、結果をコントロールできない。良い行いにご褒美を与えることや悪い行いに罰を与えることは、自分の力が及ぶ範囲で行うべきである。
  • 職場において従業員がタイプ2の幸福を感じるためには、信頼されていると感じること・自主性を感じること・会社を大事に思うこと・活躍する手段があること、これらが必要である。

  • とあるコールセンターでは毎週最大で給料の30%相当のボーナスを与えていた。ある6か月間、毎週金曜日に1週間のデータに基づいてボーナスの額を決め、月曜日に各個人のボーナス支給額を従業員に知らせることにした。すると従業員の生産性が高まったのは、仕事ができる順に上半分の人に与えた場合ではなく、下半分の人に与えた場合だったのだ。理由は、仕事ができる人は改善の余地がなく仕事の質を落としたくないのに対して、順位が下の人は「さらに頑張ろう」というモチベーションがつくからだ。

  • アメリカの半導体メーカー、インテルの工場では、従業員は4日働き4日休む。経営層は、従業員が休みを引きずらないために、1日目にはたとえば半導体を1300個作るなど目標を与え、達成できればボーナスを与えるという計画をした。ボーナスの内容を現金・ピザチケット・上司からの誉め言葉と3種類で分け実験を行った。実験の結果、ボーナスがない場合に比べて現金は5%成果が上がり、ピザチケットと誉め言葉は7%成果が上がったのだ。翌日、現金をもらったグループは一気に生産性が低下した。
  • お金でできることとモチベーションの向上のしくみには大きなギャップがある。従業員の意欲を生みだし評価されていると感じるような報酬制度が重要である。

  • ダンは2006年から2018年の間約800社の従業員に、「自分の仕事が評価されていると感じる」「職場で安心できる」など80項目のアンケートを行った。各設問の満足度が高い企業上位20社とそれぞれの株価の動きをまとめると、次の結果になった。ほとんどの企業が、S&P500種株価指数(アメリカの代表的な株価指数のこと)を上回ったのだ。株価の動きに関連する項目を分析した結果、「悪意のないミスが評価されると感じる」や「自分の給与が公正だと感じる」が重要だった一方、給与自体や福利厚生は重要な項目ではなかった。

  • 「悪意のないミスが評価される」、「給料の公正さ」の2点が企業業績と連動するという現象は、現代の組織において多くのことを意味するのではないか。
  • 誰もが職場で幸せに働きたいと思っており、経営陣も社員が職場に満足してほしいと思っているがなぜできないのか。課題は、人間のモチベーションに関する優れたモデルが存在しないことと、「あなた方のことは信用しません。やるべきことを逐一指示します」といった官僚主義が存在していることである。

  • 官僚主義の本質は信頼の欠如であり、モチベーションの代償を伴う。モチベーションの代償は目に見えないため、知らず知らずのうちに組織全体に広がり、能力を低下させてしまう。


過去に行った実験と考察が具体的に多く語られており、従業員のモチベーションや生産性向上のポイントを発見できます。ウェルビーイングの実現にもつながる内容であり、健康経営に取り組むすべての企業にオススメできる一冊です。
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