- 「ストレス対処法でよく聞くコーピングってどういうもの?」
- 「コーピングリストってどうやって作ればいいの?」
- 「コーピングを実践したいけれどなかなか思い浮かばない・・・」
このような疑問やお悩みをお持ちの方のために、今回はコーピングリストの作り方やポイント、使い方を解説します。
コーピングの具体例も多く紹介しますので、日々のストレス対策の方法を知りたい方はぜひご覧ください。
目次
コーピングとは?
コーピングとは、ストレスへ対処するために行うセルフケアの行動のことです。
たとえば、
- 好きな音楽を聴く
- おいしいものを食べる
- ショッピングを楽しむ
- 思いっきり泣く
このように、ストレスへの対処として自分が意図的にしている行動はすべてコーピングです。
コーピングはストレスを完全になくすためではなく、ストレスに気付き、適切に対処するために行います。
コーピングリストとは?
コーピングリストとは、自分のコーピングをすべて書き出しリスト化したもののことです。
ストレスを感じたときにすぐにコーピングを実践し効果を得るためには、ポイントを押さえたうえで事前にコーピングリストを作成しておくことが重要です。
それではどのように作成すればいいのか、具体的な手順を紹介します。
コーピングリストの作り方・作成のポイント
コーピングリストを作成する際はまず、自分がストレス解消に役立つと思うことや好きなこと、もの、人などを書き出します。あまり深く考えずに、思いつくものをそのまま書き出しましょう。
作成時の具体的なポイントは以下の4点です。
1.ポジティブな状態のときに書き出す
「コーピングはストレスへの対処法だから、ストレスを感じているときにコーピングリストを作ろう」
上記のように思われがちですが、ストレスを感じているときには、あまり自分のコーピングについて考えるべきではありません。
なぜならストレスを感じているときはマイナス思考に陥りやすく、つい自分を責めてしまう思考になりやすいからです。
上記のような状態のときにコーピングリストを作成しても、十分に書き出せない可能性があります。
コーピングリストは、可能な限り元気な状態のときに書き出してみましょう。
2.できるだけ多く書き出す
コーピングの内容は本格的なものではなく、たとえば「1から10までゆっくり数える」や「新聞紙を破る」などささいなことで問題ありません。コーピングリストにはできるだけ多くのコーピングを書き出しましょう。
ここで重視すべき点は質より量です。なぜなら、コーピングリストが少ないとひとつのコーピングに依存してしまい、適切な対処が行えなくなる可能性があるからです。
たとえば「コーヒーを飲む」というコーピングについて考えてみましょう。
コーヒーを飲むと気持ちがリフレッシュされ、リラックスできます。人によってはストレスが軽減され、十分な効果を得られるでしょう。「コーヒーを飲む」ことはすばらしいコーピングです。
しかし、次第にコーヒーを飲むことに慣れてくるとどうでしょうか。
コーピングリストが少ない場合、「コーヒーを飲む」ことに効果を求めてしまい、飲む量が2杯から3杯、4杯と増えることが予想されます。そうすると、カフェインの摂りすぎにより健康を損なうリスクが出てきます。
対して、コーピングリストに100個のコーピングがある場合、「コーヒーを飲む」というコーピングに効果を得られなかったとしても、そのほかの99個のコーピングから次のコーピングを選んで実践できます。
最適なコーピングを選んで十分な効果を得るために、コーピングリストには多くのコーピングを書きだすことが重要です。
3.動作を細分化する
「コーピングリストに多くのコーピングを書き出したいけれど、コーピングがなかなか思いつかない・・・」
上記のようなときは細分化して考えてみましょう。
たとえば「チョコレートが好きだからチョコレートを食べることをコーピングにしたい」という場合、そのままでは「チョコレートを食べる」というひとつのコーピングになります。
試しに「チョコレート」をお題にして細分化してみましょう。
- 「チョコレート独特のカカオの香りを楽しむ」
- 「チョコレートを舌の上でゆっくりと溶かして味わう」
- 「チョコレートを飲み込んだあとの後味を感じる」
- 「コンビニのチョコレートコーナーに立ち寄る」
- 「友人にチョコレートを配り一緒に食べる」
いかがでしょうか。チョコレートだけで5つのコーピングができました。
ほかにも「旅行」をお題にして細分化してみましょう。
- 「旅行ツアーのパンフレットを10冊集める」
- 「過去行った旅行の写真を見る」
- 「旅行先で買うおみやげを調べリストアップする」
- 「海外旅行を楽しんでいる姿を想像する」
- 「一緒に旅行に行きたい友人に声をかける」
上記のように細分化して考えると、次々とコーピングを書きだせます。
ぜひ参考にしてみてください。
4.自分へ言い聞かせる言葉を取り入れる
これまで紹介したコーピングのほかにも、自分自身を励まし、鼓舞する言葉を書き出してみましょう。
いくつか例を紹介します。
- 「何とかなるから大丈夫」
- 「明日には忘れているよ」
- 「完璧な人間なんていない」
- 「生きてさえいれば何とかなる」
- 「失敗は成功のもと」
ストレスを感じたときにコーピングリストを眺めたり、言葉を声に出して唱えてみたりしてみましょう。
コーピングの例
ここからは、コーピングの例を複数の種類に分類して紹介します。
コーピングリスト作成の際にぜひ参考にしてみてください。
認知的コーピングと行動的コーピング
認知的コーピングとは、自分の頭の中で考えイメージをすることで対処するコーピングです。
対して行動的コーピングとは、具体的な行動が伴うコーピングです。
たとえば「会議の資料が納期に間に合わず、上司に叱責された。とても落ち込み職場で泣いてしまった」というストレスについて考えてみましょう。
以下が認知的コーピングの例です。
- 「次はがんばろうと自分を励ます」
- 「自分のために叱ってくれたのかもしれないと前向きに考える」
- 「次は絶対褒めてもらうと言い聞かせる」
- 「ひと回り成長できたと考える」
- 「もう絶対泣かないと心に誓う」
対して、以下が行動的コーピングの例です。
- 「カラオケでストレス発散をする」
- 「家に帰って思いっきり泣く」
- 「家族に愚痴を話す」
- 「どうすれば期限内に作成ができるのか、業務手順を見直してみる」
- 「仲がいい先輩に相談しアドバイスをもらう」
認知的コーピングと行動的コーピングは、どちらかが優れているわけではありません。
自分に合った方法を適切に取り入れることが大切です。
長期的に効くコーピングと短期的に効くコーピング
コーピングには、時間が空いて効果が現れる「長期的に効くコーピング」と、すぐに効果が現れる「短期的に効くコーピング」があります。
先ほどと同じ例で「会議の資料が納期に間に合わず、上司に叱責された。とても落ち込み職場で泣いてしまった」というストレスについて考えてみましょう。
「納期を長くとってもらうよう上司に依頼する」というコーピングを実践した場合、効果はどうでしょうか。
実践後すぐにストレスが軽減されなかったとしても、上司が1か月後の会議では納期を長めに設定してくれるかもしれません。その場合、1か月後にはストレスが軽減され効果が現れるでしょう。
このように、長期的に効くコーピングは実践後すぐに効果が現れなくても、ストレスの原因になる周囲の環境が好転するため、長いスパンで見るとストレス軽減につながるのです。
対して、「帰宅しヤケ酒をする」というコーピングを実施した場合はどうでしょうか。
実践直後は気持ちをスッキリさせられ、コーピングの効果を得られるかもしれません。しかし翌朝、酔いが覚めた状態になるとコーピングの効果が切れ、再びストレスを感じる可能性があります。
「とにかく気持ちをスッキリさせたい」、「今すぐにストレスを軽減したい」という場合には短期的に効くコーピングを実践するとよいでしょう。しかし日々のストレスに適切に対処していくためには、長期的に効くコーピングも取り入れ、バランスよく実施することが必要です。
とっておきの特別なコーピングと、今すぐに試せる手軽なコーピング
「デパートで好きなブランドの洋服を買う」、「気晴らしに温泉旅行に行く」といったコーピングは、自分の趣味や好きなものを取り入れており、最大限の効果を得られるでしょう。
しかし、どちらも実践するにはお金も時間もかかり、対処できる機会が限られています。このようなコーピングばかりだと、ストレスを感じたとき瞬時に対処できない可能性があります。
上記のようなコーピングはとっておきの隠し玉として用意しておき、いつでも実践できる手軽なコーピングも多く用意しておくとよいでしょう。
以下にそれぞれのコーピングの例を紹介していますので、参考にしてみてください。
とっておきの特別なコーピング
- 「一日中ショッピングセンターで買い物をする」
- 「映画館で好きな映画を観る」
- 「焼き肉を食べに行く」
- 「好きなアイドルのコンサートに行く」
- 「漫画をまとめ買いする」
今すぐに試せる手軽なコーピング
- 「休日の予定を考える」
- 「遠くの空を眺めてぼーっとする」
- 「両手をグーにして思いっきり力を入れる」
- 「目を閉じて心の中で好きな歌を歌う」
- 「紙を思いっきり破く」
コーピングリストの使い方
次に、コーピングリストの使い方を紹介します。
ポイントは以下の4点です。
1.コーピングリストは持ち歩きいつでも使用できるようにする
作成したコーピングリストはいつでも持ち歩けるようにし、ストレスを感じたらいつでもコーピングを実施できるようにしましょう。
オススメの保存方法をいくつかご紹介します。
- 単語帳にひとつずつ記入する
- スマートフォンのメモ帳に入力する
- 手帳のメモ欄に書き込む
- 「コーピングノート」として小さなノートに記入する
- 書き込んだメモを財布に入れておく
自分が使いやすい方法でコーピングリストを持ち歩きましょう。
2.実施したコーピングは記録をつけて検証する
ストレスを感じたら、まずコーピングリストの中から効果がありそうなコーピングをひとつ選び、実践します。
その後効果があったのか記録し、検証をしましょう。
オススメは、日記形式で100点満点のうち何点であったか点数をつける方法です。あるストレスには20点だったコーピングが、別のストレスには80点の効果が得られるかもしれません。
点数をつけながら実践を繰り返すことで「このストレスにはこのコーピングが最適である」とベストな組み合わせを発見でき、次第にストレスへうまく対処できるようになります。
こちらの参考書籍には、記録に使えるフォーマットが数種類掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
3.新しく発見したコーピングはどんどんリストに加える
コーピングを実践していくうちに「このやり方もいいのではないか?」、「これだったらもっとストレス軽減できそう」と、新しいコーピングを発見することがあります。そんなときはコーピングリストにどんどん追加しましょう。
また、一度書き込んだコーピングはたとえ効果が得られなかったとしても、消さずに残しておくこともポイントです。
別のストレスには効果が得られたり、時間をおいて試してみるとストレス軽減につながったりする場合があるからです。
コーピングリストには完成形がありません。思いつくかぎりいつまでも増えていくものです。
新しく発見したコーピングは積極的にコーピングリストに追記し、どんどんアップデートしていきましょう。
4.ゲーム感覚でコーピングを楽しむ
コーピングに慣れてくると「次はどのコーピングを試そうか」、「これは効果がなかったから次はこれを試してみよう」と、コーピングリストからコーピングを選ぶ作業にワクワクしてくるはずです。
そのうちゲーム感覚で楽しくコーピングを実践できるようになるでしょう。
「つらく苦しい状況のときに実践するものだ」と固く考えずに、楽しく実践できるセルフケアの一環として日々の生活に取り入れてみてください。
コーピングの柔軟性とは
前述したように、コーピングを実践した後は記録し、検証をすることで適切な組み合わせを発見できます。「このストレスにはこのコーピングが最適である」というように、状況に応じて使用するコーピングを変化させることをコーピングの柔軟性といいます。
日常生活でストレスに適切に対処するためには、コーピングの柔軟性は重要なポイントです。
コーピングの柔軟性に関してはさまざまな研究が行われており、精神の健康状態との関連性が明らかにされています。
研究では「コーピングの柔軟性に富むものは抑うつ傾向が低く精神的に健康である」、「コーピングリストが豊かである者ほどストレス低減効果が高い」という点が実証されています。
コーピングの柔軟性を高めるためには、まずはコーピングリストを充実させることが重要です。その後の記録、検証の過程を積み重ねることで、「このストレスにはこのコーピングが適切である」と次第に柔軟に対応ができるようになります。
心身の健康のために、コーピングの柔軟性を高めることも意識ながらコーピングに取り組むとよいでしょう。
コーピングリストについて人と話してみよう
最後に、とっておきのコーピングを紹介します。
それは「コーピングリストについて人と話してみる」ことです。
「わたしのコーピングリストはこれだけどあなたのコーピングリストってどんなもの?」と、会社の同僚や上司、部下、友人、家族など、いろいろな人とコーピングリストについて話してみてください。
「こんな趣味があったんだ」、「このやり方もおもしろい」など、さまざまな発見があるはずです。あなたのコーピングについて、意外な反応をされたり興味をもたれるかもしれません。「これってどういう効果があるの?」、「こういうやり方いいね」など、意見を交えてみてください。
コーピングリストについて人と話すことは非常に楽しく、ワクワクした空間になります。
もちろん気になったコーピングは自分のコーピングリストにも加えて、実践してみてください。
コーピングリストを充実させどんどん実践してみよう
コーピングリストは、一人ひとり内容が異なる自分だけの特別なリストです。
ストレスと付き合い日常を豊かにするために、充実したコーピングリストを作成し積極的に実践してみてください。
なお、以下のページには企業で活用実践できるコーピングの活用方法をいくつかご紹介しています。
気になる方はこちらもご覧ください。