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『ケースでわかる 実践型 職場のメンタルヘルス対応マニュアル』健康経営書籍レビュー

『ケースでわかる 実践型 職場のメンタルヘルス対応マニュアル』健康経営書籍レビュー
健康経営に関する本・書籍をご紹介。 今回は『ケースでわかる 実践型 職場のメンタルヘルス対応マニュアル』(著:森本英樹、向井蘭)の読みどころやポイントを紹介します。
産業医と弁護士の2名で書かれている点が、非常に特徴的な本です。そのためメンタルヘルスについての医学的な知見からの記述だけでなく、実際の判例を多く引用した法律面でのアドバイスが豊富に記載されています。

【特に重要なポイント・内容】
  • メンタルヘルス不調で休職している従業員に対して、休職期間満了の直前まで連絡を取らない会社があるが、これはかなりリスクが高い。互いに連絡しないまま、3ヶ月・半年が過ぎてしまうと、双方にとって相手の様子を想像しづらい状況になってしまう。また、期間満了直前だと本人は復帰しないと生計が成り立たなくなってしまうため、「元気です」と無理にでも答えざるをえない。以上の事態を避けるために、2週間~1ヶ月に1回程度は連絡するように休職開始時に取り決めをすべき。

  • 連続30日以上、会社を休職した人の復職率を調査したところ、3ヶ月以内に復職した人が35%、6ヶ月以内だと58%、12ヶ月以内だと71%、18ヶ月以内だと75%だった。つまりメンタルヘルス不調者は半年で6割、1年で7割が復帰できると考えておくとよい。
    出典:民間企業における長期疾病休業の発生率、復職率、退職率の記述疫学研究J-ECOHスタディ(西浦千尋ほか)

  • また、同じ調査によれば退職率は3ヶ月以内で3%、6ヶ月以内で7%、12ヶ月以内で11%、18ヶ月以内で12%だった。

  • 復職がうまくいかない理由には、
    ・「本来、復職できる体調まで回復していないのに復職してしまう」
    ・「休職者に対して、会社が仕事をできる状態とはどのようなものかを明確にしていないため、休職者と会社との間にズレができてしまう」
    ・「休職した原因を明確にせず、再発防止策もないまま復職してしまったため、再度不調になる」…などが多い。

  • 休職者が職場復帰のトレーニングを積むための場所としてリワーク施設がある。地域障害者職業センターで提供されるリワークプログラムなら無料で利用できる(なお、障害者手帳の有無などは関係なく利用できる)。

  • リワークプログラムを受講したか否かで復職後の就労継続率に大きな差が出たとのデータもあるので、必要があれば積極的に利用すべき。
    出典:「リワークプログラムの現状と課題」(五十嵐良雄、日本労働研究雑誌2018年6月号)

  • メンタル不調者の主治医の意見をまったく聞かず、産業医の意見のみで解雇や退職扱いにすると違法となる確率が高い。

  • 就業規則には6ヶ月や1年などの休職期間が定められているが、それらを会社側が守らずに独自の判断で短縮した場合は違法となるので要注意。

  • 統合失調症は100名につき1名が罹患する病気と言われているため、一定以上の規模の事業所だと十分に発生しうるケースである。

  • メンタル不調で休職している従業員と定期的に面談を重ねているケースは、比較的にトラブルが発生しづらい。

  • メンタルヘルス不調の従業員に対して退職勧奨をする際は、以下を満たしていない場合は違法となる可能性が高い。
  1. 退職勧奨を断ることは可能であると伝えること
  2. 退職勧奨を従業員が明確に拒否したら、それ以上の退職勧奨をしないこと
  3. 将来の解雇や自然退職扱いについては断定的な表現は使わないこと(「退職勧奨を断れば解雇する」など)
  4. 1時間を超える長時間の面談はしないこと

  • メンタルヘルス不調での休職後に従業員を解雇や自然退職扱いとし、その後に労災認定がされて解雇や自然退職が無効になると、「雇用契約は継続しており、会社が賃金を支払う義務があったにもかかわらず、賃金を支払わなかった」と見なされるため、多額の賠償金が発生するリスクがある。過去には6000万円以上の賠償額が命じられた事例も存在する。

  • 長時間労働が従業員のメンタルヘルス不調の原因として見られるケースの場合は、休職期間の延長も選択肢のひとつとして従業員と話し合い、解雇・自然退職扱いをなるべく避けたほうがよい。

  • 「この人は優秀なので休職期間を延長してあげよう」などのあいまいな基準で休職期間延長をするのもリスクがある。かならずしも優秀でない人から休職延長の要望が出された際にも、応じる必要が法的に発生してしまうからだ。休職期間延長をする際には「休職前に長時間労働が発生していた」などの明確な基準を設けて、それに従うべき。



後半は主に、実際の判例をもとに作られたケーススタディが中心となり、「メンタルヘルスケアだけでなく、法律的にも問題がない対応とは何か?」を知りたい方にはとても役立つでしょう。

特にメンタルヘルス不調で休職中の従業員への対応についての法律面でのアドバイスについては、トップクラスに詳しい本になっています。
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