健康経営に関する本・書籍をご紹介。 今回は『第2版 管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント』( 著:亀田 高志)の読みどころやポイントを紹介します。
「管理職のための」とタイトルに付いているとおり、経営者や管理職目線でのメンタルヘルスケアに特化した本になっています。
実用的な知識だけでなく、「どのようにメンタルヘルスケアを理解すればいいのか?」「どのように部下と接すればいいのか?」といった管理職・経営者に必要なマインドセットや心構えを読みやすい文章で解説しています。
実用的な知識だけでなく、「どのようにメンタルヘルスケアを理解すればいいのか?」「どのように部下と接すればいいのか?」といった管理職・経営者に必要なマインドセットや心構えを読みやすい文章で解説しています。
【特に重要なポイント・内容】
- 今後は60代、70代までしっかり働く時代になると予想されるので、職場の健康状態やメンタルヘルスのケアが重要になってくる。※補足:2025年4月より、中小企業も含めたすべての企業において、65歳までの定年延長が義務化される。
- そして、同じ会社で働きつづける場合、60歳を超えると嘱託社員扱いなどになるケースが多いので、現在の部下や後輩がいずれ自分の上司となる。そのため10年後~30年後にも良い関係を築くためにも、部下・後輩のメンタルヘルスケアは怠ってはいけない。
- メンタル不調で休職している社員の「良くなった」は、フルタイムで以前と同じように働ける状態になったことを必ずしも意味しない。抗うつ薬が効果を発揮するケースは5割~7割程度。そのうち3分の2では状態が安定するが、それでも半分以上がうつ病を再発する。
- 厚生労働省の調査では、メンタル不調の生涯有病率(一生の間に発病する確率)は、うつ病の類いで7.0%、不安障害の類いが4.2%になる。アルコール依存症なども含めると、精神障害の合計の生涯有病率は22.7%とかなり高くなる。
出典論文:精神疾患の有病率等に関する大規模疫学調査研究 (世界精神保健日本調査セカンド 平成26年度総括・分担研究報告書 厚生労働省厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業)
- メンタルヘルスケアや職場復帰支援プランを整備すれば、たとえメンタル不調者の数自体はそこまで変わらなかったとしても、再発のリスクなどを低減して労働損失日数を少なくすることができる。
- メンタル不調者の対応で考えるべきポイントは以下の8つ。
- 事例性:「不調者の発生による、職場サイドの問題は何なのか?」
- 連携:「人事部門、専門家、家族との情報共有を行い、方向性は一致しているか?」
- 疾病性:「病気があるのか、どのような病気なのか?」
- 会社責任:「組織としての責任を労災補償や民事訴訟の観点で問われないか?」
- 復職準備性:「復職の時点で、気力や体力が就業に耐えるくらい回復しているか?」
- 個人的な事情:「プライベートでの問題が経過や結果に影響していないか?」
- 職務適正:「そもそも、現在の仕事・業務に向いているのか?」
- 落とし所:「リスクと損失を最小化するゴールはどのような状態なのか?」
- ストレスを増やす仕事内容は以下のとおり。
- 単調でサイクルが短い、バラバラで意味がない、スキルを活用できない、確かさがない
- 過重か、反対に過小な負荷、時間的プレッシャー
- 硬直化したスケジュール、予測できないスケジュール、長すぎて生活に不適切な労働時間
- 意思決定に参加できない、過重な負荷をコントールできない
- ストレスを増やす職場環境などは以下のとおり。
- コミュニケーションのなさ、問題解決や成長への乏しいサポート、組織の目的が不明確
- 役割が不明確、同僚などとの役割に関する衝突、重すぎる責任
- キャリアの停滞、遅い(早すぎる)昇進、少ない報酬、仕事が不安定、低い社会的価値
- 職場の先輩との関係が薄い、人間関係における衝突、周囲のサポートの欠如
- 仕事と生活との間の葛藤、共働きの困難さ
- 過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した働く人は32.5%。そのうち、パワハラを受けたと感じたものの「何もしなかった」人は40.9%。
出典:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」2017年公開
- アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が挙げている、職場環境などの改善を通じたストレス対策のポイントは以下のとおり。
- 過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
- 労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
- 仕事の役割や責任が明確であること
- 仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
- 職場でよい人間関係が保たれていること
- 仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること
- 職場での意思決定への参加の機会があること
実際に大企業の産業医を長年勤め上げ、企業の経営者・管理職への講演・セミナーも豊富におこなっている著者ならではの知見が多く詰まっている本だと言えます。
経営者・管理職・人事労務担当者として、どんなマインドセット(心構え)でメンタルヘルスケアを進めていくべきかを学べる一冊です。