健康経営に関する本・書籍をご紹介。 今回は『人事担当者・管理職のためのメンタルヘルス・マネジメントの教科書』( 著:清水隆司)の読みどころやポイントを紹介します。
産業医の著者が「メンタルヘルスとはそもそも何か?」という初歩から、実際に従業員がメンタルヘルス不調になったときの対応方法までを丁寧に紹介している本です。
【特に重要なポイント・内容】
- 現在はメールやチャット、Web会議システムなどの遠隔コミュニケーションツールが普及した結果、メンタルヘルス不調を従業員が伝えづらく、上司や人事担当者も気付きづらい状況になっている。
- メンタルヘルス不調の原因には、生物学的要因(脳の機能の問題)・社会的要因(環境の問題)・心理的要因(認知・性格の問題)の3種類が関係している。
- ストレス要因(ストレッサー)とストレス状態は異なるので、混同しないように注意する。
- 医師からの診断書の病名だけで従業員のメンタル状態を判断するのは危険。たとえば精神科主治医が「うつ状態」を表現する際には、「抑うつ状態」・「自律神経失調症」・「心因反応」などのそれぞれ異なる診断名が使われることがある。したがって、診断名に「うつ」の文字が入っていなかったとしても、「この人はうつ病ではないんだ」と即断してはいけない。
- 衛生委員会を有意義な時間にするひとつのアイディアとして、定期健康診断結果の活用が挙げられる。従業員の平均血圧や肥満率の変化などを取りまとめて発表して、意見を交わすことで、より有効な話し合いとなる。
- メンタルヘルスに不調を抱えた従業員は経済的な理由で休みたくないケースも多々あるので、傷病手当金の活用も検討すべき。
- 従業員に通院を勧める際には「うつ病」などの病名を口に出すのはNG。また、「あなたの体が大事なので、病院に行ってください」など、「心・精神」などのワードを主語にするのではなく「あなたの体」を主語にすべき。また、「早く治しましょう」というのもプレッシャーになりうるので、「じっくり治しましょう」などと伝えるとよい。
以上のような内容のほかにも、自分や家族がメンタルヘルス不調を抱えた際の対応方法も紹介されています。
後半はメンタルヘルス不調で従業員が休業する際のポイントや、職場復帰をスムーズに実施するためのアドバイスが中心です。
実際に自分たちの職場でメンタルヘルス不調者が出たときのための予備知識を得るうえでも活用できるでしょう。