オーケーディー株式会社様は奈良県生駒市の金属加工会社です。
主に超仕上げ磨きと呼ばれる、1000分の1ミリの超精密研磨を得意としています。
主に超仕上げ磨きと呼ばれる、1000分の1ミリの超精密研磨を得意としています。
現在の世界に必要不可欠な半導体や液晶部品の研磨には、オーケーディー様の匠の技が使われており、“お客様にとって価値あるものをご提供する”という想いが、その丁寧なお仕事には込められています。
2009年には中小企業庁主催「元気なモノ作り中小企業300社」における「日本のイノベーションを支えるモノ作り中小企業」部門に選定されました。
数年前に岡田社長と吉田総務部長を中心に健康経営を開始し、現在では健康経営優良法人 ブライト500認定をはじめ、カーボンオフセットによるCO2排出削減にも貢献しています。
今回は吉田総務部長に健康経営を始めたきっかけや、取り組みの内容、中小企業ならではの工夫についておうかがいしました。
健康経営をこれからスタートさせたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
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- 健康経営の取り組み当初は、戸惑いながらも知識を深めつつ手探りで進めた
- 従業員全員の健康こそが、良好な経営の基盤になるとあらためて認知
- 歩数や血圧をきちんと見える化して記録することで、自発的に運動に取り組む従業員が増えはじめた
- 新型コロナウイルス感染拡大後の緻密な対策や健康への配慮
- コロナ禍により不足しがちなコミュニケーションの活性化
- 95%の従業員が「健康チャレンジ活動を継続したい」との声
- 健康経営推進は売上げと従業員の健康に相乗効果を生み出す
- 健康経営活動の継続的な啓発により、健康チャレンジ活動の定着を図る
- 健康経営優良法人ブライト500認定後、大手企業からも注目
- 今後の課題は、従業員が高いストレスを抱えた場合に、どのような精神的ケアを施すか
- 機械にメンテナンスが必要なように、人にもメンテナンスが必要
- インタビュー後記
オーケーディー 株式会社様 紹介動画
健康経営の取り組み当初は、戸惑いながらも知識を深めつつ手探りで進めた
Q.健康経営の取り組みを始めたきっかけについて教えてください
会社全体が健康である必要性はもちろん感じていたのですが、そのなかで保険会社から「健康経営を始めてみたらいかがですか?」という話をもらったのがそもそもの発端ですね。
同時に社長にも声がかかりまして、「あ、それおもしろいな!」というのがスタートでした。
その際に健康経営優良法人に認定されると、企業のブランドイメージの向上にもつながるとのお話もお聞きしましたね。
Q.「健康経営」という言葉を初めて聞いたときのイメージや第一印象はどうでしたか?
そうですね。最初は明確にイメージできなかったというのが、率直なところです。
もちろん以前から健康診断を通じて、従業員の健康には日頃から気を配ってきました。
また労働基準法でも定められているとおり、長時間労働の禁止などには総務部としても取り組んできていました。
しかし、「健康経営とはそもそもどんなものかがわかりづらい」というのが第一印象でしたね。
健康と経営がどう結びつくのかが、わかりづらかったということでしょうか?
そうですね、そこはまだピンときていなかったですね。
健康と経営を結び付けて考えることに加え、まだ具体的にどんな施策をするのか明確ではなかったのです。
Q健康経営を取り組み始めるにあたっての課題などはありましたか?
まず何をどう取り組めばよいのか、という戸惑いがありました。
そこで保険会社の健康経営担当者から概要を教えていただいて、段階的にさまざまな施策を計画しました。
計画していくなかで健康経営優良法人の認定制度を知り、弊社も認定取得を目標に掲げチャレンジしてみようとなったわけです。
どのような手順で健康経営優良法人への申請ができるのか、保険会社の担当者から説明してもらい、段取りよくやっていただきました。
その手順に沿って取り組みの初年度は、手探りで進めたような状態です。
従業員全員の健康こそが、良好な経営の基盤になるとあらためて認知
Q.健康経営優良法人の認定を目指した主な理由について教えてください
やはり企業のブランドイメージの向上ですね。
やるからには必ず認定を目指しましょうと。
その後、健康経営の本質の知識を深めていくうちに、単に健康経営優良法人認定の取得という考えだったものが、「健康こそ良好な経営の基盤なので取得すべきだ」との目的へと変わっていったんです。
そこからは専門家の意見も取り入れながら、計画を始めました。
漠然と健康経営を進めるわけではなく目標を立てて、そのゴールとして取得を目指そうということでしょうか?
そうですね。総務としては健康経営の方針をたてて、基本的なコンセプトを打ち出してスタートしました。
健康経営導入に至る趣旨の共有は必要ですし、従業員にはどういった施策で健康経営を行うかなどの説明の場も兼ねて、全員参加の研修会を開催しました。
Q健康経営を始めますと宣言した時の従業員みなさんの反応はいかがでしたか?
うーん、どうなんでしょう。
半ば押しつけのような形になっていないか心配ですね(笑)。
はじめは、やらざるを得ない状況だと判断されたんじゃないでしょうか。
半ば強制と受けとられたとしても、従業員のみなさんがより健康になれれば結果として良いわけですからね
そうですね。ポジティブに受け止めます(笑)。
歩数や血圧をきちんと見える化して記録することで、自発的に運動に取り組む従業員が増えはじめた
Q.実際に取り組んだ健康経営の具体的な施策を教えてください
まずは奈良県の協会けんぽで実施されている健康チャレンジ宣言に参加することにしました。
具体的には食事における減塩や、禁煙にチャレンジするなどの施策です。
※健康宣言事業…各保険者(各地の協会けんぽや健康保険組合)が実施している制度。健康宣言をおこなう企業の健康づくりを支援して、保険加入者(従業員)の健康を増進させることを目的としている。
そのチャレンジ項目を活用して、従業員それぞれに自らの健康目標を掲げてもらい「健康経営の運動を実践していきましょう」と発信しました。
掲げた目標は各自の机やロッカーに掲示してもらいました。総務部が主体となり「健康目標に沿って2ヶ月間、みんなでチャレンジしましょう」と発信したんです。
会社としても健康宣言目標をたてて、3つの工場すべてに掲示しました。
従業員全員に詳しい活動内容まで理解してもらうのは困難なことです。
しかし、全体会議などでも健康経営は必ず議題にも上げており、健康経営を推進しているんだよとの意志だけでも伝わればと思っています。
2022年度の取り組みでは歩数計を支給し血圧計も社内に設置して、各自の健康意識向上を図りました。
歩数計に関しては、勤務中にどのくらいの距離・歩数を歩いているのか認識してもらうためです。
なかには「今日は歩数が少ないからマラソンしてみよう」という方もいましたし、新たに自転車通勤を始めた方もいましたね。
「健康のために歩きなさい」と伝えるのは簡単ですが、数値として見える化したことで従業員の自発的な行動につながったのではと思います。
歩数は毎日退勤時に歩数集計表に記入してもらっています。
一歩あたり50センチとして仮定すると、毎月の歩いた距離もおおまかに把握できるわけです。
他社のお話でも「社長からトップダウンで社員に運動しましょうと伝えても、なかなか実行されない」などのエピソードはよくお聞きしますね
従業員のモチベーションを高めるためには、活動内容を数値化してフィードバックすることが重要です。
従業員間で健康運動に対する熱量の温度差が生じないように、フォロー体制も必要ですね。
なお、血圧計設置は実は従業員発のアイディアなんです。各工場の食堂に設置して、朝の出勤時や昼休憩時に血圧を計測して記録をとっています。
習慣化する工夫を行っているわけですね
働くこともそうですし健康経営の活動も習慣化しないと、ずるずると形骸化します。
従業員から「どういった成果につながるのか」と問われた際には、活動の中期毎にデータ化した数値を見える化し、フィードバックして回答することで透明性が保てるわけです。
ほかの健康経営優良法人やブライト500認定の企業様でも、ここまで緻密に数値化されている例は少ないのでは、と感じます
正直、大変ですよ(笑)。
歩数計も血圧計も会社の福利厚生の一貫でもあるので、経営側目線では有効活用していかないと意味を成しません。
そのために苦労する点も多々ありました。
よくありがちなのは血圧計を誰も使用しなくなり、置物のような状態になっているというケースですが、オーケーディー様はそうならないよう工夫されているんですね
毎日使ってもらうために、血圧計も計って終わりではなく傍に置いた記録表に数値を記入させています。
見える化してフィードバックすることを意識しないと、おそらく実行してくれる従業員はほとんどいないんじゃないかと思います。
歩数計も同じことが言えますね。
新型コロナウイルス感染拡大後の緻密な対策や健康への配慮
ほかには、新型コロナウイルス関連でのやむを得ない休暇はガイドラインに沿って、療養期間中は特別休暇扱いとしております。
安心して働いていただくために、新型コロナウイルスのワクチン接種日も特別休暇としています。
全従業員が何回ワクチン接種したかも記録していますね。
毎朝の出勤時には検温を実施し、感染予防にも取り組んでいます。
来客の際も受付にて検温、問診票を記載していただくなど徹底した感染予防に力を入れています。
中小企業のほとんどは基本的に少数精鋭で業務を担当していますので、予期せぬ欠員があると納期やパフォーマンスに多大な悪影響が出ますからね。
またインフルエンザ予防接種には会社から接種費用上限4000円まで補助も出していますし、健康診断にて内臓脂肪の数値が高い方などには、再受診を勧めています。
分煙化の施策については、完全分煙となるように喫煙所を屋外へと移動、設置しました。
本意としては敷地内全面禁煙としたいのですが、喫煙者の感情を考慮すると、なかなか難しいですからね。
コロナ禍により不足しがちなコミュニケーションの活性化
新型コロナウイルスの感染拡大後は、慰安会などの行事も中止せざるを得ない状況が続きました。
代わりの取り組みとしては、お盆休暇前に従業員にお弁当を配布しました。
年末にはお弁当とお菓子を配布するなどの取り組みを通じて、不足しがちなコミュニケーションの活性化を図っています。
なかでも印象深かった施策は健康経営活動の初年度に、全従業員に向けて講師を招いての健康経営セミナーを開催したことでした。
このセミナーにより、健康経営活動に対する意志の共有ができたのではと感じましたね。
また保険会社の担当者から、健康経営の具体的な施策例を教えてもらい、全従業員との情報共有のために独自セミナーも開催しています。
逆に、協会けんぽを通じて、弊社の健康経営施策を他企業様に向けて講演する機会もありましたね。
毎年のプランとしては健康推進委員を中心として、来年度の活動方針と年間計画を立てています。
現在はその会議に向けた資料を作成している段階です。
経営者や従業員みんなで一丸となり健康経営会議を通してコミュニケーションを取っています。
95%の従業員が「健康チャレンジ活動を継続したい」との声
Q健康経営に取り組んでいるなかで得た成果や実績を教えてください
成果としては健康チャレンジのアンケートを集計した結果、従業員の健康に対する意識が高まったことです。
「翌年も健康チャレンジを継続したいか?」との項目では、全従業員40名中38名に当たる95%の方が継続の意志を示してくれたんです。
さまざまな取り組みを積極的に行った結果、ブライト500の選出にもつながったのかもしれません。
健康チャレンジ活動は毎回改善を加え、今季で健康チャレンジ4年目ですが「継続したい」との声が大多数ですね。
※ブライト500…健康経営優良法人の中小規模法人部門の認定を受けたなかでも、特に優れたトップ500の法人に贈られる顕彰
これだけ多くの方が「翌年も続けたい」と声をあげてくれていることに対して、手応えは感じますか?
健康経営は、仕事面のみならず良い影響を与えることの意識付けをしっかりしてきた結果なのかな、と思っています。
健康経営推進の取り組みが完全に浸透していない時期も、当初ありました。
しかし100%周知という手応えを得るために年度ごとに推進委員を交代して、健康経営に向きあう機会を作ったうえで、共に協議しながら活動をしています。
従業員が自発的に健康経営へ参画してくれるように、これからも工夫は重ねたいです。
健康経営推進は売上げと従業員の健康に相乗効果を生み出す
Q健康経営を始めて会社や従業員の方の様子に変化などはありましたか?
現在は半導体のニーズが大きいため多くの受注をいただいており、日々、工場の稼働率が高くなっている状態です。
現状では平均残業時間が30時間前後と通常より多めですが、それでも従業員のお休みをしっかり確保するために、法的に定められた年間最低5日間以上の有給休暇の取得を積極的に推進しています。
健康診断の集計を見ると、大きな病気や疾病もそこまでないため、健康経営活動が従業員の健康に寄与しているのではないかと思います。
持病などはセンシティブな情報のため、詳細には開示されませんが勤怠などの状況を見ると、皆が健康で日々の業務に励んでくれていると感じました。
それに相まって売上や収益も向上しているので、健康経営は相乗的に好影響をもたらしているとも実感しました。
従業員のみならず、事業も健康になっているんです。
ここに相乗効果が無いと、そもそも成立しませんからね。
長期的に継続して収益を上げるには、従業員の健康があってこそです。
健康経営活動の継続的な啓発により、健康チャレンジ活動の定着を図る
Q健康経営を始めて従業員の方からのうれしい反応などありましたか?
うれしい反応は従業員の大多数の運動意識が向上したことですね。
今後は従業員から「今年も健康チャレンジやりましょう!」と言いだしたら、しめしめです。
日頃より総務中心となり「来年も健康経営優良法人を目指すぞ!」と啓発していますから、それが功を奏しているのかもしれません。
新卒・中途採用問わず、入社時には資料にて健康経営の研修も行っています。例年ですと7,8月の2か月間が健康チャレンジ月間なので、今年も実施予定です。
健康経営に関する資料も各従業員に定期配布するなど、健康経営の活動を継続してアピールすることが重要です。
健康経営優良法人ブライト500認定後、大手企業からも注目
Q健康経営優良法人ブライト500認定後、社外の方や取引先などの反応はいかがですか?
大学から健康経営に関する調査の依頼はありましたね。
また大手飲料メーカーからもコンタクトがありました。
ブライト500に認定されると大手飲料メーカーから直接連絡があるのか、と感心しました。
縁がなかった企業からも注目を浴びることに驚きでした。
応接室にも認定証を掲示しており、見ていただいた方からの好印象な反応もうれしく感じます。
自己満足かもしれませんが、従業員も事業も健康になれば御の字です。
相乗効果として弊社のブランドイメージ向上や「オーケーディーさんは健康経営にも取り組まれているのか」と感じていただけたら幸いです。
今後の課題は、従業員が高いストレスを抱えた場合に、どのような精神的ケアを施すか
Q健康経営の取り組みにおける今後の目標や課題があれば教えてください
目標としては、禁煙率をもっと下げたいですね。
将来の講演活動の実践事例として「100%禁煙に成功しました!」と、いつの日か発表したい気持ちがあります。
今後は従業員から健康活動に対してアイディアを出してもらって、実効性を検証しながら柔軟な支援をしていきたいですね。結果として健康につながることが一番です。
実は弊社では過去に2名の従業員を心筋梗塞で亡くしています。
熟練した技術者は機械のように簡単に替えがききません。
研磨業務では習得に数年かかる技術がたくさんありますからね。
弊社工場は品質管理上、フルシーズン室内温度23℃に保っています。
屋外で猛暑や極寒のなか働くわけではないので、環境としては悪くはないかと思いますが、ミクロの精度での加工を要求されるので精神的に負担がかかる場面もあります。
ストレス状態をアンケートから把握して、該当者を精神的にケアすることも今後の課題ですね。
受注生産なので事業に波はありますが、事業と健康のバランスを保ってこれからも活動していきます。人材が一番の財産なので、従業員はもちろん、ご家族の健康にも気を配って今後も成長を続けていきたいです。
機械にメンテナンスが必要なように、人にもメンテナンスが必要
Qこれから健康経営を始める企業にアドバイスなどあれば教えてください
事前に健康経営に関する知識の社内共有を図って、足並みをそろえてスタートすることが必要です。
活動施策の効果をデータ化して蓄積していくのに加えて、会社と従業員の間で信頼関係を築きながら活動することが、どの企業でも苦労する点かと思います。どちらかが一方的では成立しませんから。
中小企業ではまだまだ人員に余裕はありません。
錯綜する業務の中で、総務部などの担当部署が健康経営の活動を兼任で行うことになるかと思います。はじめは戸惑いもあるでしょうが、「従業員みんなの健康のため」というあたたかい想いを込めた健康経営の組織づくりが大切です。
年間計画や活動資料の作成、活動データ蓄積、フィードバックするといった業務は常にありますが、挫けず継続することが成功の秘訣ですね。もちろん健康経営専門の担当部署を新たに組織できればいいのですが、中小企業では難しいのが現実ではないでしょうか。
健康推進委員の選出にも、弊社では交代制にてお願いをしています。委員交代時のスムーズな引き継ぎのために、資料提供や研修を行うなどのフォローで負担を抑えることも大切です。
土台さえできればあとは少しずつ改善し、バージョンアップを図りながら推進するはずです。
こういった継続した健康への働きかけが、おのずと健康経営優良法人への認定へとつながります。
やるからには目標を達成したいし、ご褒美は欲しいですからね。
大げさですが機械にメンテナンスが必要なように、人にもメンテナンスは必要です。
健康経営を取り入れるのはハードルが高く思われるかもしれませんが、組織の活性化に大きく貢献します。
健康経営には「理論より実践」、「苦労をいとわず尽力し続けること」この意識が大切ですね。
インタビュー後記
オーケーディー様は、健康経営活動を形骸化させないように、さまざまな工夫をしている点が印象的でした。
健康経営活動は始める以上に継続させるほうが困難です。
活動内容を従業員に見える化してフィードバックし、健康経営に対する知識や活動意識に温度差が生まれないようにフォロー体制を整えるなど、オーケーディー様らしい従業員に寄り添った取り組みがうかがえました。
また新型コロナウイルス感染拡大後は緻密な対策を定め、「少しでも従業員の不安を払拭せねば」との熱い想いも感じられました。
健康経営は「理論より実践」というお言葉は、健康経営にご興味のある方の背中を押すような言葉でした。健康経営が売上げと従業員の健康に、相乗効果をもたらしたお話も参考になります。
健康経営優良法人は認定自体がゴールではなく、そこからが企業としての新たなスタートなのかもしれません。
オーケーディー様の事業や取得している各種認定については、公式サイトでも紹介されていますので、ぜひご覧ください。
参考ページ:オーケーディー株式会社 公式サイト