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心理的安全性がない会社・低い職場のデメリット・特徴・原因を解説

心理的安全性がない会社・低い職場のデメリット・特徴・原因を解説
  • 「最近、心理的安全性という言葉をビジネスの現場でよく聞くけど、本当に必要なの?」
  • 「自分の会社・職場の心理的安全性の高さをチェックしたい」

そんな疑問・要望をお持ちの方のために、今回は心理的安全性の意味の解説や、心理的安全性がない会社・低い職場の特徴をわかりやすく紹介します。

心理的安全性が低いことのデメリット・原因も解説しますので、自分の会社・職場の心理的安全性を高めたい方はぜひご覧ください。


目次

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  1. 心理的安全性とは?
  2. 心理的安全性を低下させる原因・行動の特徴
  3. 無知だと思われる不安(IGNORANT)
  4. 無能だと思われる不安(INCOMPETENT)
  5. 邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)
  6. ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)
  7. 4つの不安に職場ではなく「従業員個人」が対応しようとする結果、職場はどんどん非効率化・硬直化していく
  8. 心理的安全性がない会社・低い職場にはどんなデメリットが発生し、何が起きるのか?
  9. デメリット1.従業員が本質的な価値を生み出す仕事よりも、自己の印象操作や「やってる感」の演出にかまけてしまう
  10. デメリット2.事業・業務改善のアイディアが出されず、イノベーションが起きないので停滞してしまう
  11. デメリット3.従業員のモチベーションや仕事への熱意が低下する
  12. デメリット4.会社全体の生産性が低下し、商品・サービスの質や売り上げも伸び悩む
  13. デメリット5.離職率が上昇して、従業員の負担が増える
  14. デメリット6.致命的なトラブルや事故が発生してしまう
  15. デメリット7.問題の隠蔽や不正が横行する
  16. 心理的安全性の測定方法
  17. 従業員同士の仲が良いかと、心理的安全性が高いかは別問題である
  18. 会社・職場の心理的安全性を高める方法
  19. 方法1.1on1ミーティングなどの面談・コミュニケーションの機会を増やす
  20. 方法2.会議や打ち合わせ・ミーティングの場で、特定の人に発言が偏らないように心がける
  21. 方法3.ミスや失敗を積極的に報告できる空気を作る
  22. 心理的安全性の確保は今後の日本企業では必須になる
  23. 健康経営に役立つ資料を無料でダウンロードできます!

心理的安全性とは?

心理的安全性(psychological safety)とは、組織のなかで不安を感じずに自分の意見や気持ちを積極的に発言できる状態のことです。Googleが2015年に「チームの生産性・パフォーマンスを高める最も重要な要素は、心理的安全性である」と発表して以降、世界的に注目されるようになりました。

もともと、心理的安全性はハーバード大学で組織行動学を研究している
エイミー・C・エドモンドソン教授によって、提唱された概念です。

エドモンドソン教授はスピーチフォーラム(TED)のなかで、心理的安全性のない組織ではどんな事態が引き起こされるのかや、心理的安全性の作り方・高める方法を紹介しました。
※なお、エドモンドソン教授の研究は以下の著作にもまとめられていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

心理的安全性を低下させる原因・行動の特徴

会社・職場の心理的安全性が低くなる原因には、従業員が抱えている4つの不安が背景にあるとエドモンドソン教授は提唱しています。

  1. 無知だと思われる不安(IGNORANT)
  2. 無能だと思われる不安(INCOMPETENT)
  3. 邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)
  4. ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)

それぞれ具体的に紹介していきます。

無知だと思われる不安(IGNORANT)

無知だと思われる不安(IGNORANT)
上司や先輩・同僚に、業務について質問・確認しようとしたときに「こんなことも知らないのか」「前にも教えたでしょ?」などと返されないか、心配になった経験がある方も多いのではないでしょうか?

それが典型的な「無知だと思われる不安」です。

従業員が「無知だと思われる不安」に襲われて質問や確認を控えた結果、業務のミスや不備が起こる確率は高まります。

無能だと思われる不安(INCOMPETENT)

無能だと思われる不安(INCOMPETENT)
何らかのミスを従業員がしてしまったときには、「なんでそんなことも、まともにできないんだ」「こいつは仕事ができない」などと思われてしまわないかの不安が頭のなかをよぎります。

これが「無能だと思われる不安」です。

「無能だと思われる不安」を強く感じた従業員は些細なミスや失敗・トラブルでも報告することを恐れるようになりますし、深刻化するとミスを隠蔽したり認めなかったりといった行動を取ってしまいます。

邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)

邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)
自分が発言することで「議論を邪魔してしまうのではないか」「チーム内の空気が悪くなってしまうのではないか」などと恐れてしまう感情が、「邪魔をしていると思われる不安」です。

この「邪魔をしていると思われる不安」に従業員が囚われてしまうと、事故・トラブルにつながる違和感なども報告されなくなりますし、業務・ビジネスを改善する提案も出てこなくなります。

ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)

ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)
自分の意見を発言しようとしたときに、「会社の方針に対して批判的だ」「ネガティブな意見ばかり出している」などと受け取られないか気にしてしまって、結局その意見を自分で封じ込めてしまった経験はないでしょうか?

それが「ネガティブだと思われる不安」です。

職場の和を乱してしまうのではないか、という懸念から従業員が発言しなくなる傾向は、とりわけ日本企業において顕著であり、闊達な議論を妨げてしまいます。

新たな気づきやアイディアも提案されづらくなりますので、会議やミーティングの停滞を招きます。

4つの不安に職場ではなく「従業員個人」が対応しようとする結果、職場はどんどん非効率化・硬直化していく

心理的安全性のない会社では、質問・確認・発言をせず、ミスやトラブルに気付いていないふりをしたり隠蔽したりするのが最適な行動になってしまう

以上の4つの不安を「従業員個人」が解消する方法はとても簡単だ、とエドモンソン教授は言います。

つまり、自分が無知だと思われたくなかったら、不明点や確認点がもしあっても何も質問しなければよいのです。

無能だと思われたくなかったら、ミス・トラブルがあっても報告せず、気付いていないふりや隠蔽をすればよいのです。

上司や同僚に仕事の邪魔をしていると思われたくなかったら、違和感や異なる意見があっても発言しなければよいのです。

批判的だ・ネガティブだと思われたくなかったら、現状を批判せず自分の意見を封じこめればよいのです。

心理的安全性がない会社や低い職場では、以上のような行動・振る舞いこそが、自分の身や立場を守るうえで最適な行動になってしまいます。

従業員個人の人格や能力とは関係なく、心理的安全性の低い職場では自然と風通しが悪くなり停滞と硬直化を招く

それは従業員個々人の意識の高さや仕事への熱意、倫理観とは関係なく、構造上そのようなバイアスが職場全体にかかってしまうということです。

従業員がこのように萎縮した状態で働いている職場は、当然風通しが悪くなりますし、仕事に対する向上心や学びも少なくなっていきます。

また、情報の共有が円滑に進まないため、業務の効率も著しく悪化します。

斬新なアイディアやイノベーションが生まれることも少なくなるため、会社に長期的な停滞と硬直化を招くことでしょう。

心理的安全性がない会社・低い職場にはどんなデメリットが発生し、何が起きるのか?

それでは、心理的安全性がない会社にはどんなデメリットが発生し、どんな事態が引き起こされるのでしょうか?

デメリットをひとつずつ紹介していきます。

デメリット1.従業員が本質的な価値を生み出す仕事よりも、自己の印象操作や「やってる感」の演出にかまけてしまう

心理的安全性のない会社では、4つの不安のバイアスのため、従業員は自己印象操作に走るようになる

先ほど、「無知だと思われる不安」・「無能だと思われる不安」・「邪魔をしていると思われる不安」・「ネガティブだと思われる不安」の4つの不安が、職場の心理的安全性を低下させるというお話をしました。

4つの不安に従業員個人が適応した結果、彼らは自分を守るために「何も質問しない」「間違いがあっても気付かないふりをするか、隠蔽する」「アイディアを出さず発言しない」「現状を批判せず、自分の意見を封じこめる」といった振る舞いをするようになります。

エドモンドソン教授はこれらの振る舞いを「自己印象操作」と呼んでいます。

従業員が「仕事をしているふり」にばかり一生懸命になる結果、本質的な仕事に割く時間は急減して、生産性も低下する

従業員が「仕事をしているふり」にばかり一生懸命になる結果、本質的な仕事に割く時間は急減して、生産性も低下する
心理的安全性の低い職場では、多くの従業員が本質的な価値を生み出す仕事よりも、自分の印象を操作することのほうに集中するようになるのです。

顧客に良質な商品・サービスや付加価値を届けるよりも、社内の数人しか読まない資料作りに力を注ぐようになる…などの行動は、本質的な仕事と自己印象操作の転倒の最たるものだといってよいでしょう。

心理的安全性のない会社・低い職場では、従業員が無意識のうちに「仕事をしているふり」や「やってる感」の演出にばかり時間と労力を割くようになるので、生産性が著しく低下してしまいます。

デメリット2.事業・業務改善のアイディアが出されず、イノベーションが起きないので停滞してしまう

心理的安全性のない会社では「どうせ発言しても何も変わらないよ」という雰囲気が蔓延し、新しいアイディアが創出されない

心理的安全性のない会社・低い職場では、「仕事の邪魔をしている」「面倒なことを言っている」と思われる不安から、従業員が萎縮してしまい発言や提案が抑制されます。

また「どうせ発言しても何も変わらないよ」という思考が従業員間で蔓延しており、会議やミーティングでしらけたムードが漂っている職場も少なくありません。

アイディアや改善のプランが創出されない会社・職場では、イノベーションが生まれる確率も極めて低くなってしまいます。

日本では今後、毎年ひとつの県が消滅するとの同じペースで人口が減少するので、現状維持のビジネスのみではいずれ成り立たなくなる

日本では今後、毎年ひとつの県が消滅するとの同じペースで人口が減少するので、現状維持のビジネスのみではいずれ成り立たなくなる
「イノベーションや改善なんてウチの会社(職場)には不要で、これまでと同じ仕事をそのまま続けていけばそれでいいんだ」という考え方もあるかもしれません。

しかし、少子高齢化が急速に進んでいる日本において、これまでと同じ事業を漫然と続けていても、いずれ頭打ち・右肩下がりに陥ってしまうのはほぼ確実です。

総務省統計局の発表によると、2022年3月1日の日本の人口は前年同月比で約65万人減少しました。

出典:人口推計の結果の概要(総務省統計局)

鳥取県の人口が約55万人、島根県の人口が約67万人ですから、たった1年で鳥取県や島根県ぶんの人口が減少してしまったということです。

今後も県がひとつ消滅するのと同じ規模での人口減少が、日本では毎年続いていくと予想されています。

このように日本では急速に潜在的な顧客・消費者が減少していますから、これまでと同じビジネスで現状維持していたとしても、いずれ成り立たなくなるのは目に見えているでしょう。

たとえBtoB事業であっても、日本では企業数も減少の一途をたどっているので、現状維持だけでは長期的な売り上げ低下は避けられない

たとえBtoB事業であっても、日本では企業数も減少の一途をたどっているので、現状維持だけでは長期的な売り上げ低下は避けられない
また、一般消費者を相手にするBtoC事業だけでなく、BtoB事業でも決して他人事ではありません。

人口が減少するのと同じく、日本においては企業数も減少の一途をたどっているからです。

1999年には日本の企業は485万社存在しましたが、2016年には359万社にまで減少しています。


17年で126万社が消滅している計算になります。

このように企業数も日本においては右肩下がりで急速に減少していますから、たとえBtoBの事業であっても、現状維持だけでは長期的な売り上げ低下は避けられません。

つまりイノベーションや事業の改善は長期的に会社を存続させるためには、今後必須になってくるのです。

心理的安全性のない会社・低い職場はイノベーション・改善を生み出す土壌自体を破壊してしまうので、成長が伸び悩み長期的な停滞を招いてしまいます。

デメリット3.従業員のモチベーションや仕事への熱意が低下する

従業員のモチベーションや仕事への熱意が低下する
心理的安全性のない会社・低い職場は風通しが悪く、「提案や意見を出しても無駄だ」との雰囲気が蔓延しますので、従業員が自らの仕事に裁量性や工夫の余地を持てなくなります。

また、先述したように心理的安全性が低い職場では本質的な価値を生み出す仕事よりも、「仕事をしているふり」や「やってる感の演出」のほうが重視されるようになりますから、従業員は「自分が今やっているこの仕事は無価値なのでは?」という疑念にも苛まれるようになります。

その結果、従業員は「単に言われたことをこなしているだけ」の状態に陥り、仕事への熱意やモチベーションが著しく低下してしまいます。

デメリット4.会社全体の生産性が低下し、商品・サービスの質や売り上げも伸び悩む

会社全体の生産性が低下し、商品・サービスの質や売り上げも伸び悩む
ここまで説明してきたように、心理的安全性のない会社・低い職場では、従業員が本質的な価値を生み出す仕事よりも「仕事をしているふり」に一生懸命になります。

イノベーションや成長も起きづらくなり、従業員のモチベーションの低下も止められません。

以上の要因から、会社・職場全体の生産性が低下して、商品・サービスの質が劣化し、売り上げも伸び悩むようになります。

実際、Googleも心理的安全性が高いチームのメンバーは収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍多いとの研究結果を発表していますので、心理的安全性が職場の生産性や効率に直結するのは明らかです。

出典:「効果的なチームとは何か」を知る(Google)

売り上げが増加しないと従業員の給与や賞与をアップするのも難しくなりますから、それがさらに従業員のモチベーション低下につながる…という負のスパイラルに陥るでしょう。

デメリット5.離職率が上昇して、従業員の負担が増える

心理的安全性の有無は離職率にも大きく影響するので、退職する従業員が増え、残ったメンバーの負担も重くなる

心理的安全性の有無は離職率にも大きく影響するので、退職する従業員が増え、残ったメンバーの負担も重くなる
心理的安全性のない会社・低い職場では、「無知だと思われる不安」・「無能だと思われる不安」・「邪魔をしていると思われる不安」・「ネガティブだと思われる不安」の4つの不安に従業員が絶えず苛まれることになります。

また、会社・職場全体に停滞感が蔓延し生産性も落ちこむため、働くこと自体にモチベーションが湧かなくなりますし、「自分はいつまでもこの職場で働いていていいのか?」「この会社に将来性はあるのか?」との疑念を従業員は払拭できません。

そのため多くの従業員が転職・退職を検討しはじめます。

Googleも「心理的安全性が高いチームのメンバーは離職率が低い」との研究結果を出していますので、心理的安全性が会社・職場の離職率に大きく影響することが明らかになっています。

出典:「効果的なチームとは何か」を知る(Google)

心理的安全性のない会社・低い職場は従業員が定着せず、離職率も高止まりするので、抜けた人材の穴埋めを残ったメンバーでしなければなりません。

当然、1人あたりの業務の負担は重くなりますし、新しい従業員が手配できたとしても研修・教育する時間・労力を割く必要に迫られます。

新しい従業員を採用する費用はアルバイトでも数万円、正社員だと100万円近くかかり、損失を回収するには1400万円もの売り上げ増をしないとペイできないこともある

新しい従業員を採用する費用はアルバイトでも数万円、正社員だと数十万円がかかり、損失を回収するには1400万円もの売り上げ増をしないとペイできないこともある
また、穴埋めの人材を募集するのにも、もちろん時間・労力・お金がかかります。

従業員を1人採用するのにかかるコスト(採用単価)は、おおむね以下のとおりです。

●新卒採用の1人あたりの採用コスト(採用単価):93.6万円
出典:就職白書2020(株式会社リクルートキャリア)

●中途採用の1人あたりの採用コスト(採用単価):103.3万円 
出典:就職白書2020(株式会社リクルートキャリア)

●アルバイト・パートの1人あたりの採用コスト(採用単価):5.2万円
出典:『株式会社ツナグ・ソリューションズ アルバイト・パート1名の採用コストは4年で1.7倍上昇! 人材確保のポイントは「応募時の対応」。』(データは2014年時点)

また、仮に新卒社員が1年で退職してしまった場合のコストは280万円にもおよび、損失を回収するには1400万円もの売上増を達成しなければならないとの試算もあります。

出典:部下1人の退社に伴う会社の損失(ダイヤモンドオンライン)

離職率が高い職場では人材の穴埋めのために、以上のような余計なコストを支払う必要が出てきますから、収益が圧迫されて従業員の給与・賞与・福利厚生を向上させることも困難になるでしょう。

そのことがさらに離職者の続出を招く…という負のスパイラルに、心理的安全性のない会社・低い職場はここでも陥ってしまいます。

デメリット6.致命的なトラブルや事故が発生してしまう

心理的安全性が低い職場では、従業員が違和感に気付いても報告しなかったり放置したりする確率が増加する

心理的安全性が低い職場では、従業員が違和感に気付いても報告しなかったり放置したりする確率が増加する
心理的安全性のない会社・低い職場は最悪の場合、重大なトラブルや事故まで引き起こしかねません。

エドモンドソン教授は、心理的安全性の低さが致命的な事故を招くことを、ある病院を例に出して説明しています。

【心理的安全性の低い職場が致命的な事故に直結する事例】
ある病院で夜勤をしていた看護師が、1人の患者に処方された薬剤の投薬量が通常よりも多いことに気付きました。

その看護師は自宅にいる担当医に電話して「この投薬量で問題ないんでしょうか?」と質問しようかと悩みましたが、以前にその医者から「こんな夜中に連絡してくるな!」と怒鳴られたことを思い出し、結局連絡するのをやめたそうです。

このような状況では、いつ人命にかかわりかねない医療事故が起きてもおかしくありません。

違和感や不調を感じても気軽に発言できない会社・職場では、致命的なトラブルや事故の発生確率が高まる

そして、心理的安全性の低さが致命的なトラブル・事故の温床になるのは、病院だけとは限らないのです。

  • 工場でミスや不調・違和感に気付いた社員がいても、何も言わなかった
  • 会社全体で進めているプロジェクトに大きな不安要素や懸念点があるのに気付いていたが、批判的に取られる恐れがあったため、発言を控えた

以上のような例は枚挙に暇がありません。

心理的安全性のない会社・低い職場では、従業員の誰かが違和感に気付いても発言するのをためらってしまうため、深刻なトラブル・事故の発生率が高まってしまうのです。

デメリット7.問題の隠蔽や不正が横行する

不祥事を起こした企業は、心理的安全性が低い職場で起きやすい共通点を抱えている

不祥事を起こした企業は、心理的安全性が低い職場で起きやすい共通点を抱えている
心理的安全性が低く、「上司の言うことは絶対だ」「会社の方針に意見を差し挟むことは許されない」という雰囲気が充満している会社・職場ではモラルハザードも起きやすくなります。

「問題の隠蔽や不正に手を染めても、上司・会社が言うことは絶対に達成しなければならない」というバイアスが従業員にかかるからです。

東京海上ディアール株式会社は2020年1月以降に発生した企業不祥事を分析するなかで、不正に手を染めた企業は以下のような共通点があることを明らかにしました。

【不祥事を起こした企業の共通点】
  • 責任者・担当者が不正行為を認識していたにも関わらず、上層部に報告しなかった。
  • 担当者が不正行為の認識や疑念を持っていたにも関わらず、上司の指示に従わなければならないと考えて当該行為を継続していた。
  • 担当者が不正行為の認識があっても、そのこと自体は経営層の指揮命令、判断に由来するものであり、自らの責任に帰属するものではないと考えていた。
  • 内部通報制度が機能しておらず、不正行為の是正の機会がなかった。
  • 売上目標が偏重により、不正行為が黙認されていた。


以上の共通点は、いずれも心理的安全性のない会社・低い職場で起きやすい行為です。

実際に多くの企業不祥事の裏側には心理的安全性の低さがあり、年間180~200社がコンプライアンス違反で倒産している

実際に多くの企業不祥事の裏側には心理的安全性の低さがあり、年間180~200社がコンプライアンス違反で倒産している
実際、多くの著名な企業不祥事の裏側には、会社・職場全体の心理的安全性の低さがあったことが指摘されています。

参考ページ:「ものが言えない」恐怖で人を縛る会社の怖い末路(東洋経済オンライン)

問題の隠蔽や不正が常態化するほど、それが明るみに出たときのダメージも深刻になります。

会社の信頼性・ブランドも失墜し、売り上げにも大きな悪影響があるでしょう。

また、帝国データバンクの調査によれば、毎年180~200社を超える企業がコンプライアンス違反を原因に倒産していますから、会社自体が存続できない自体にもなりかねません。

出典:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2020年度) (帝国データバンク)


以上のように、心理的安全性の低さは会社・職場に多大なデメリットをもたらします。
それでは、自分たちの会社・職場の心理的安全性が高いか低いかをどのようにチェックすればよいのでしょうか?

心理的安全性の測定方法を次に紹介します。

心理的安全性の測定方法

会社・職場の心理的安全性の高さをチェックする質問

自分の会社・職場の心理的安全性が高いか低いかをチェックしたいときは、以下の各質問に回答してみてください。

【心理的安全性の高さをチェックする質問】
  • チームの中でミスをすると、たいてい非難される
  • チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
  • チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある
  • チームに対してリスクのある行動をしても安全である
  • チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
  • チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない
  • チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる

以上の質問に対してポジティブな回答が多ければ、みなさんの会社・職場の心理的安全性は高く、ネガティブな回答が多ければ心理的安全性は低いと言えます。

心理的安全性が低い職場の会議・打ち合わせ・ミーティングの特徴

また、会議・打ち合わせ・ミーティングで以下のような特徴が当てはまるのであれば、その会社・職場の心理的安全性は低い傾向にあります。

【心理的安全性が低い職場の会議・打ち合わせ・ミーティングの特徴】
  • 上司や一部の従業員ばかりが発言しており、発言時間が偏っている
  • 素朴な疑問や質問を提起するのをためらってしまう
  • 新人が発言しづらい、あるいは新人の意見が汲み取られない傾向が強い
  • ミスや課題の報告をしづらい雰囲気である
  • 「なぜそんなことをしたんだ」などの他の従業員の責任を追及するような発言が多い
  • 意思決定において、メンバーに意見やフィードバックを求める機会がない
  • メンバーの発言が途中でさえぎられることが多い

以上の特徴に当てはまるようであれば、会社・職場の心理的安全性を高める努力が必須です。

従業員同士の仲が良いかと、心理的安全性が高いかは別問題である

従業員の仲が良いかと、心理的安全性が高いかは別問題である
「ウチの会社(職場)はみんな仲が良いから、心理的安全性は高いと言えそうだ」と考えている方もいるかもしれません。

ですが、実際には仲の良さと心理的安全性の高低は切り分けて考える必要があります。

従業員同士の距離が近くて仲が良いがゆえに、職場の空気を壊すことを恐れて、自分の気づきや発言を控えることもありえるからです。

心理的安全性が高い職場は「空気を読まない提案・発言でも自由にできること」が特徴ですから、仲の良い空気を壊したくなくて発言を控える傾向が強い日本の職場とは、むしろ真逆です。

仕事中や会議中は空気を読んで発言することを避け、雑談や飲み会の場でしか、会社や業務についての意見や本音を言えないようであれば、いくら仲が良くても、その職場の心理的安全性は低いことになります。

※もちろん、仲の良さと心理的安全性の高さが両立しないわけではありません。従業員同士の仲が良くて、なおかつ、ざっくばらんに意見を交換できる心理的安全性が高い職場も存在するでしょう。

会社・職場の心理的安全性を高める方法

それでは、会社・職場の心理的安全性を高めるにはどうすればよいのでしょうか?

心理的安全性の向上に効果的な施策を紹介します。

方法1.1on1ミーティングなどの面談・コミュニケーションの機会を増やす

上司と部下の1対1の面談を高頻度で繰り返す1on1ミーティングは、Googleなどの多くの先進企業で取り入れられている

上司と部下の1対1の面談を高頻度で繰り返す1on1ミーティングは、Googleなどの多くの先進企業で取り入れられている
Googleなどの先進企業が心理的安全性向上のために実際に取り入れている施策が1on1ミーティング(ワン・オン・ワン・ミーティング)です。

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1でおこなう定期的なミーティングのことです。1回あたり15分~30分程度の短い時間で、毎月・毎週などの高頻度で繰り返すことが特徴です。

人事評価面談とは違いますし、事業や業務の方針を打ち合わせるための時間でもありません。

1on1ミーティングの主な目的は、部下の成長のサポートと人間関係の活性化にあります。

1on1ミーティングで話すと効果的な話題

1on1ミーティングでは上司は主に部下の話を聞く側に専念して、以下のような話題について部下に問いかけます。

【1on1ミーティングで話すと効果的な話題】
  • チームの方針・戦略の共有と意見交換
  • 成功した仕事への賞賛と失敗した仕事へのフォロー
  • 成功した仕事がなぜうまくいったのかの意見交換
  • どんな仕事の進め方が好きか、やりやすいかのヒアリング
  • 現在の業務で気になっている点や不安な点はないか
  • キャリアについての相談・アドバイス
  • 趣味や現在興味を持っていることのヒアリング

以上の話題を話し合うことで、上司・部下の双方が歩み寄りと自己開示をできるようになり、心理的安全性が高まります。

方法2.会議や打ち合わせ・ミーティングの場で、特定の人に発言が偏らないように心がける

会議や打ち合わせ・ミーティングの場で、特定の人に発言が偏らないように心がける
いつも上司や一部の従業員しか発言していないような会議・打ち合わせ・ミーティングでは、なかなか新しい視点やアイディアも生まれないものです。

できるだけ発言の時間が各メンバー間で均等になるように、「●●さんはこの件についてどう思う?」などと質問するように心がけるとよいでしょう。

とりわけ新入社員や若い社員、非正規雇用・パート・アルバイトのスタッフなどは発言を控える傾向にあるため、意識的に発言を引き出すようにしてください。

方法3.ミスや失敗を積極的に報告できる空気を作る

ミスや失敗を積極的に報告できる空気を作る
先述したとおり、会社・職場の心理的安全性の低さは致命的なトラブルや事故を招いてしまいます。

従業員がミスや失敗を報告するのをためらうような環境では、いつ深刻な事態が起きても不思議ではありません。

そのため、ミスや失敗をとがめず、積極的に報告しあえる空気を形成しましょう。

上司やリーダー自らが、「自分もミスや失敗を犯すことはもちろんあるので、気付いたら指摘してほしい」などと呼びかけるのも効果的です。

心理的安全性の確保は今後の日本企業では必須になる

心理的安全性の確保は今後の日本企業では必須になる
急速に少子高齢化が進む日本では、今後、慢性的に多くの職場が人手不足に悩まされることになります。

さらに新興国が経済成長を続けるなか、グローバルでの熾烈な競争にも日本企業はさらされることでしょう。

日本企業の従業員にかかるプレッシャーは、これからますます大きくなっていくことが予想されます。

そんななか、従業員のストレスを緩和し、モチベーションと生産性を向上する手助けになるのが心理的安全性です。

ぜひみなさんの会社・職場でも、心理的安全性を高める取り組みを始めてみてください。
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