- 「運動不足なので改善したいが、何から始めたらいいかわからない…」
- 「1日にどれくらいの運動をしたらいいの?」
- 「従業員の健康のため、職場で実践できる運動を知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方のために、今回は最適な運動量や日常での取り組み方について解説します。
健康経営において取り組むべきポイントも多く紹介しますので、ぜひご覧ください。
目次
運動がもたらす健康効果
身体活動量が多い人や運動をよく行っている人は、血性心疾患、高血圧、糖尿病などの罹患率が低いことが認められています。高齢者においても寝たきりや死亡を減少されるとされており、疾病予防のため日々の運動は欠かせません。
またメンタルヘルスにおいても、不調を改善するために役立ちます。適度に汗をかくことで気分がスッキリし、よい気分転換になります。
※出典:身体活動・健康(厚生労働省)
一方で、運動不足や身体活動不足は、肥満や生活習慣病の発症を及ぼす危険があります。
WHOは、全世界の死亡に対する危険因子として、高血圧(13%)、喫煙(9%)、高血糖(6%)についで、身体活動不足(6%)を第4位と位置付けています。
日本においても、国民の健康増進を維持するための指針「健康日本21」が定められており、適切な運動習慣の確立が必要です。
最適な運動量とは?
厚生労働省は平成25年(2013年)、健康増進や生活習慣病の予防を目的として「健康づくりのための身体活動基準2013」を策定しています。
以下は、1日当たりの目標運動量です。
※健診結果が基準範囲内である場合
全年齢層共通の方向性 | 18~64歳 | 65歳以上 | |
身体活動 (生活活動+運動) | 今より少しでも増やす | 3メッツ以上の強度の身体活動を (歩行又はそれと同等以上) 毎日60分 | 強度を問わず、身体活動を 40分 |
運動 | 運動習慣を持つようにする | 3メッツ以上の強度の運動を (息が弾み汗をかく程度) 毎週60分 | - |
メッツとは、運動強度を表す単位のことで、安静時を1として活動の強度を表します。
下記を参考に取り組んでみましょう。
※取り組み具合は個人の状態によって調整してください。とくになんらかの持病があったり通院中であったりする場合は、医師の判断をもとに取り組んでください。
運動不足解消のための取り組み
- 「運動がからだに良いとは分かっているけれど、忙しくて運動する時間がとれない…」
- 「何から始めたらいいかわからない…」
このような場合は、まずは自分が日頃どれくらい運動をしているのか、セルフチェックをしてみましょう。
運動習慣は頻度、時間、強度、期間の4要素から定義されます。国民栄養調査では運動習慣者を「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」とされており、チェックの際基準のひとつとするとよいでしょう。
次に、より効果的に取り組めるように、自分のからだがどれくらい機能しているのかをチェックします。
スポーツ庁では、道具を使わずに一人で確認できるやり方を公開しています。動画でわかりやすく解説されているので、参考にしてみてください。
また厚生労働省では、前述した「健康づくりのための身体活動基準2013」の目標値を達成するための実践の手立てとして、国民向けのガイドライン「アクティブガイド」を策定しています。
「+10(プラステン):今より10分多く身体を動かそう」をメインメッセージとして、日常の中で身体活動を増やし運動習慣を確立することを推奨しています。
下記の取り組み例を参考に、無理のない範囲で気軽に取り組みを始めてみましょう。
- テレビを見ながらストレッチをする
- 電車は一駅前で降りて歩く
- ウィンドウショッピングで思いっきり歩く
- ランチは少し離れた店まで歩いていく
健康経営優良法人認定との関係
運動機会の増進に向けた取り組みは、健康経営優良法人認定の認定要件の1つとなっています。
取り組み内容としては、運動機能のチェックを定期的に行うことや、運動機会の増進を目的とした同好会・サークル等の設置・金銭支援や場所の提供を行うことなどが挙げられます。
認定要件を満たすためには、何らかの取り組みを継続的に実施することが重要です。
なお、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件は年度ごとに改定が実施されます。
最新のものは内容が異なっている可能性がありますので、最新・正確な情報を知りたい方は必ず健康経営優良法人認定事務局のポータルサイトや、経済産業省の公式ページをチェックしてください。
参考ページ:ACTION!健康経営(日本経済新聞社)
参考ページ:健康経営優良法人認定制度(経済産業省)
従業員が運動不足の場合は、企業にも影響を及ぼす
従業員が運動不足である状態が続いた場合、企業にとっても悪影響のため注意が必要です。
従業員が健康被害を患い生産性が低下する
運動不足によって従業員になんらかの不調が生じた場合、場合によっては休職や退職に追い込まれ、企業全体の生産性に直結するでしょう。
また、仮に休職・退職に至らなくても、不調を抱えたままでは仕事に集中できないため、結果として生産性が低下してしまいます。
このようになんらかの疾病や不調を抱えながら従業員が出勤し、生産性が低下している状態のことをプレゼンティーズムと呼びます。
人材確保が困難になる
前述した通り、運動不足は生活習慣病の発症やメンタルヘルス不調につながり、従業員は休職や退職に追い込まれることがあります。
仮に採用担当者が上記のような状態になると、採用活動においても影響が出るため注意が必要です。
また、経済産業省は「就活生とその親が勤務先に望む勤務条件」についてアンケートを実施しています。
下記の結果から、多くの就活生と親が「健康に働き続けられるかどうか」を重視していることがわかります。
従業員が運動不足によりなんらかの不調を抱えたまま働いている職場は「従業員の健康に配慮している企業」とは言いにくく、望む人材を確保しにくいでしょう。
医療費が高額になる
運動不足が原因で生活習慣病などの疾病に罹った場合、従業員の通院や治療の頻度が増えます。
企業が負担する医療費が増加する可能性があり、大きな痛手です。
なお、日本における医療費は年々増加傾向にあり、令和4年度(2022年度)の総額は46兆円まで上がっています。
企業での取り組み
それでは、実際に従業員の運動機会増進につながる企業内での取り組みを紹介します。
今回は取り組みやすい内容として、下記の6点を紹介します。
- 就業時間内に運動する時間を導入
- 社内に運動器具を設置
- 運動メニューを作成
- スポーツイベントの開催
- 歩行の勧奨
- 福利厚生
1.就業時間内に運動する時間を導入
ストレッチやヨガなど、従業員全員で取り組む時間を導入します。
中でも、手軽に取り組みやすいのがラジオ体操です。ラジオ体操には屈伸運動や跳躍運動が組み込まれており、短時間で全身を動かせます。
また一般財団法人簡易保険加入者協会によると、ラジオ体操を3年間以上計測して実施している人は、体内年齢や血管年齢、骨密度など健康状態を示す数値が良好であることが明らかになっています。
2.社内に運動器具を設置
たとえばバランスボールや懸垂マシン、ダンベル、ヨガマットなどを社内に設置し、従業員が空き時間に利用できるよう環境を整備しましょう。
その際、体重計や血圧計などの健康器具を併設すると、従業員の健康意識をより高められるでしょう。
3. 運動メニューを作成
単に「運動しましょう」と呼びかけるのではなく、従業員が自主的に取り組めるようニーズに合った運動メニューを作成しましょう。
たとえば、「重いものを運搬する作業が多く足腰に負担がかかりやすい」という場合は、以下のような腰痛対策の運動プログラムを作成し従業員に配布します。
厚生労働省は、ほかにも高齢者やメタボリックシンドロームの人を対象にした運動プログラムを提示しています。
参考にしてみてください。
参考ページ:標準的な運動プログラム(厚生労働省)
4.スポーツイベントの開催
全従業員が参加するイベントを定期的に開催することで、からだを動かすきっかけづくりになるとともに、従業員同士のコミュニケーション向上にもつながります。
具体的には、ウォーキングやマラソン、ボーリング、サイクリング、登山、ゴルフなどをレクレーションとして実施するとよいでしょう。地域の大会や清掃活動などに参加することも方法のひとつです。
5.歩行の勧奨
取り組みにおいて「これだけ運動した」という一定の目標値を設けることは、従業員のモチベーション向上に有効です。なかでも歩数は計測しやすく、達成しやすい目標値を設定できます。
取り組みとしては、歩数計の配布や徒歩通勤の支援、歩数を競う社内イベントの実施などが挙げられます。
運動を勧奨したり、エレベーターではなく階段を利用するよう日常的に呼びかけたりすることも重要です。
6.福利厚生
従業員が社内のみならず、私生活の中も自発的に運動に取り組めるよう環境を整えましょう。
スポーツジムや運動施設などの利用料、スポーツウェア代などの費用を補助し、手軽に運動に取り組めるようにしましょう。
なお、厚生労働省は健康づくりを推進する上で、適切な内容の施設を認定する「健康増進施設認定制度」を策定しています。
なかでも「運動型健康増進施設」は健康増進のための有酸素運動を安全かつ適切に行うことのできる施設として全国で346施設(※)が認定されています。(※令和5年(2023年)11月07日現在)
このような施設の利用を促すとよいでしょう。
参考ページ:健康増進施設認定制度(厚生労働省)
運動習慣を身につけ、健やかな日常を送ろう
適度な運動はさまざまな疾病を予防し、心の健康にも役立ちます。
とくに生活習慣病の予防には、運動習慣の確立が欠かせません。令和4年(2022年)の日本人の主な死因のうち、代表的な生活習慣病であるがん・心疾患・脳血管疾患は全体の46.2%を占めています。
「取り組みたいが時間がない」、「きつい運動はしたくない」と思わず、手軽に取り組めるものからスタートしてみましょう。
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